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[2011.06]GLAUBER ROCHA BEST SELECTION トロピカリア・ムーヴメントの一翼を担ったシネマ・ノーヴォの旗手 グラウベル・ローシャの5作品が日本公開

文●中原 仁
texto por JIN NAKAHARA

 本稿は、月刊ラティーナ2011年6月号に掲載されたものです。中原 仁さんのご協力により、e-magazine LATINAに転載致します。中原 仁さん、ありがとうございます。

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 ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス(1928〜)、ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ(1932〜88)と共に、〝シネマ・ノーヴォ〟と呼ばれるブラジルのニューシネマを牽引した映画監督、グラウベル・ローシャ(1938〜81)。没後30年を記念した「グラウベル・ローシャ・ベスト・セレクション」が、6月18日から東京のユーロスペースで上映される。

 シネマ・ノーヴォのオピニオン・リーダーもつとめたグラウベル・ローシャの映像は、大胆かつ強引な力技と独得の美意識に貫かれ、動と静のダイナミズムが見る者を挑発する。そして作品の根幹には揺るぎないブラジリダーヂがある。彼の映画は同郷のカエターノ・ヴェローゾに影響を与え、トロピカリアのムーヴメントの一翼を担った。その部分も盛りこみながら彼の生涯を振り返っていこう。

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 グラウベル・ローシャは1938年3月、バイーア州南部の内陸の町、ヴィトーリア・ダ・コンキスタで生まれた。10代で州都サルヴァドールの学校に進み、演劇サークルの活動を経て映画に目覚める。57年にリオを訪れてネルソン・ペレイラ・ドス・サントスの『リオ、ゾナ・ノルチ』の撮影を見学。サルヴァドールの大学に在学中の59年、監督としての処女作となる短編映画『中庭』を制作。また、サルヴァドールとリオの新聞の文化欄に映画評論を書き始めた。

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