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[2021.09]映画評 『スイング・ステート』 『コレクティブ 国家の嘘』

衆院選を控え、ちょうどいいタイミングで公開される
選挙と政治とメディアの関係に鋭く斬り込んだ傑作2本!

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文●圷 滋夫あくつしげお(映画・音楽ライター)

 ほとんど広報活動に見える自民党総裁選を大手メディアが無批判に垂れ流し(また電通が裏にいるのか!?)、野党にとってデメリットが大きくなる一方のこの狂騒が終われば、その後は衆院選だ。コロナ禍〜五輪/パラ五輪開催の流れの中、負う必要などなかったはずの多くの人々の様々な不幸を、いかに自分事として考えられるか、そして奇しくも可視化された現政権の無能さと市民に対する非情さに気付き、それに対するアクションを起こす。つまり次の選挙にしっかり参加することこそが、こんな世の中を少しでも暮らしやすい未来に変えてゆくための近道だろう。デイヴィッド・バーンも『アメリカン・ユートピア』(2020)の中で言ってたよ。「みんな、選挙に行こう!」って。そんな衆院選を控えたこの時期にバッチリのタイミングで公開される、選挙や政治、そしてメディアとの関係について鋭く斬り込んだ2本の映画を紹介しよう。

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『スイング・ステート』
9月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷・渋谷シネクイントほか
全国ロードショー
©2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved
配給:パルコ ユニバーサル映画

 まずはアメリカの架空の田舎町で行われる町長選の、町を二分する騒動の顛末を描いた『スイング・ステート』。ブッシュ時代のアメリカをブラックジョーク満載で検証した傑作『バイス』(2018)を生み出したブラッド・ピットの PLAN B 制作、そして近年は演技派としての評価も高く『バイス』にも出演している “コメディ・キング” スティーヴ・カレルが主役の、強烈な笑いを振りまく社会派娯楽政治映画だ。監督はアメリカの人気テレビ番組「ザ・デイリー・ショー」のキャスターとしてアメリカの政治風刺の定義を変えたとも言われる、コメディアン/脚本家/プロデューサー/作家で、本作が長編映画2作目となるジョン・スチュワートだ。

 2016年の大統領選。トランプにまさかの敗北を喫した民主党の選挙参謀ゲイリー・ジマー(スティーヴ・カレル)は、共和党と接戦を繰り広げる州 “スイング・ステート” での次なる一手として、YouTubeでリベラルな演説が話題の退役軍人ジャック・ヘイスティングス(クリス・クーパー)を民主党候補として町長選に擁立すべく、ウィスコンシン州の田舎町ディアラケンへと向かう。ジャックは、ゲイリー自らが選挙戦の指揮を執るという条件で出馬を決意し、ゲイリーはこの町にしばらく留まることになる。やがてその動きを察知した共和党は、現職町長のために大統領選でもゲイリーと対立した宿敵の選挙参謀フェイス・ブルースター(ローズ・バーン)を送り込み、二人の争いはメディアを巻き込んだ派手な選挙合戦へと肥大してゆくが…。

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