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[2023.3] 【島々百景 第81回】 端島 長崎県

文と写真:宮沢和史

 江戸時代後期に長崎県沖で見つかった大規模な炭鉱を明治20年代に民間が買い取り、埋め立て工事をして人工島とした “端島(はしま)” をご存知だろうか? 島全体を護岸堤防で固め、採掘するための巨大な施設、そこで働く人達が家族単位で暮らすための団地や公共施設、映画館などの娯楽施設や神社なども完備された天空の城ならぬ、まさに海上の城...。その姿が軍艦土佐を連想させることから“軍艦島”という愛称で長い間親しまれてきた。人口の増加に伴い、島自体が拡張され、ピーク時には東京都の9倍の人口密度を誇ったという。時代が進むにつれ、エネルギーが石炭から石油に移行すると徐々にその役目を失い、1974年に閉山し、島民はそれぞれの場所へと移り住み、完全なる無人島になった。長い間放置されたままだったが、2015年に世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産~製鉄・製鋼・造船・石炭産業~」に指定され、現在では一般の人達が上陸し見学ツアーに参加することが可能な観光資源のひとつになっている。

 かなり前の話だが、沖縄のシンガー喜納昌吉さんから「2人で一緒に曲を作ろう」と誘っていただいたことがあった。喜納昌吉&チャンンプルーズの次のアルバムに収録する曲を作りたいということだった。そこで、以前渡ったことのある端島で同じ時間を共有し、ゼロから2人で作曲したらどうか?と提案してみると大変乗り気になってくれて長崎市内で集合し、翌日端島へと渡ることになった。

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