世界の音楽情報誌「ラティーナ」

[2021.09]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り14】 奄美大島のショチョガマ・平瀬マンカイ −夏の節目における稲魂の招来−
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[2021.09]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り14】 奄美大島のショチョガマ・平瀬マンカイ −夏の節目における稲魂の招来−

文:久万田 晋(沖縄県立芸術大学・教授)  奄美では旧暦8月の初丙をアラセツ(新節)、その後の初壬をシバサシ(柴挿)と呼び、一年で最も重要な節目(折目)となっている。これにドゥンガ(シバサシ後の甲子)を加えてミハチグヮチと呼ぶ。アラセツやシバサシは、たんに奄美にとどまらず南島の島々に広範囲にひろがる夏の大きな節目の行事である。この夏の節目、区切りの時期に後生から戻り来る先祖の霊を歓待する一方で、悪霊を祓い家屋の厄災を祓い清める。そのために奄美各地で行われるのが八月踊りという

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[2021.08]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑦】もうひとつの戦争体験

[2021.08]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑦】もうひとつの戦争体験

文●月野楓子  オリンピックが終わった。言いたいことは色々あるけれど、ひとまず置いておくとして。  沖縄では、空手の喜友名諒選手が沖縄に初めてのオリンピック金メダルをもたらしたことに沸いた。喜友名選手の行きつけという食堂のおばぁが嬉しさで踊っている様子がテレビで流れ、見ているこちらまで嬉しい気持ちになった。  喜友名選手の母校は沖縄国際大学だ。大学のwebサイトにも早速お祝いのメッセージが掲載された。そこで同時に目に入るのは、8月13日「普天間基地の閉鎖を求め、平和の尊さ

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[2021.08]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り13】 八重山のアンガマ −帰還する祖先神との交流−
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[2021.08]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り13】 八重山のアンガマ −帰還する祖先神との交流−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  沖縄県の南端に位置する八重山の島々では、旧盆(盂蘭盆)のことをソーロン(精霊)と呼ぶ。島によっては、この時期にアンガマといって顔を笠や手拭いで覆い隠した青年男女の一行が集落の家々を歌い踊りながら巡り廻るのである。一行の先頭にはウシュマイ(爺)とンミ(婆)と呼ばれる老人の面を付けた存在がいて、各家で人々と数々の問答を行う。この老人は旧盆にムラに還ってきた先祖の代表すなわち祖先神であり、それに続く一行は祖先神に従う精霊た

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[2021.07]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り12】 沖縄の木遣り歌 「国頭サバクイ」

[2021.07]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り12】 沖縄の木遣り歌 「国頭サバクイ」

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  沖縄の民謡の目立った特徴として、労働歌、作業歌が少ないということがある。日本本土の民謡なら、たとえば田植唄、田草取り唄、麦刈唄、麦搗唄、糸紡ぎ唄、地曳網唄、馬追唄、杭打唄…… というように、ありとあらゆる仕事、作業の工程に関わる民謡が存在する。その裾野の広がりを明らかにすることは、これまでの日本民謡研究の重要な目的のひとつでもあった。ところが、沖縄ではなぜか労働歌、作業歌が少ない。ここでその理由を明らかにすることはで

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[2021.06]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑥】「世替わり」の中の移民と文化

[2021.06]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑥】「世替わり」の中の移民と文化

文●月野楓子  去る6月23日は「慰霊の日」だった。76年前の今日、沖縄に配備された日本軍の司令官が自決し、組織的な戦闘は一応終結したとされる(以降も離島での戦闘や日本軍による住民殺害、飢餓等によって多くの人が亡くなった)。戦争による惨禍が再び起こることのないよう「恒久の平和を希求するとともに戦没者の霊を慰める」ため、「慰霊の日」が制定された。県内の学校や役所は休みとなり、様々な場所で祈りが捧げられる。  地上での戦いが展開された沖縄戦では20万人以上の人々が命を落とした。

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[2021.06]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り11】 沖縄の創作エイサー −伝統性と現代性の競合−

[2021.06]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り11】 沖縄の創作エイサー −伝統性と現代性の競合−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  前にエイサーを紹介した記事(連載第3回)においても、戦後沖縄で始まったエイサーコンクールを通じてエイサーが大きな変貌を遂げたことを指摘した。エイサーはいまや県外各地、そして世界各地にも広がっている。その大きな原動力となったのが1980年代に登場した創作エイサーの団体であり、その嚆矢が後に紹介する琉球國祭り太鼓である。  創作エイサー団体は、従来の地域に密着した青年会エイサーとは、様々な点において違いがある。その違い

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[2021.05]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り10】 沖縄のハーリー行事 −爬竜船競漕と龍蛇神への願い−

[2021.05]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り10】 沖縄のハーリー行事 −爬竜船競漕と龍蛇神への願い−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  沖縄では、旧暦5月4日に各地でハーリー行事(爬竜船競漕)が行われる。この日の朝、沖縄ではハーリー行事の始まりを知らせる鐘が鳴ると梅雨が開けると言われている。これは元々中国中南部に由来する行事であるが、それ以外にタイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、ボルネオ、香港、台湾と東アジア・東南アジアの各地で行われている。  爬竜船競漕の起源については、古代中国春秋戦国時代、楚の政治家屈原(くつげん)にまつわる由来譚がある。屈原

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[2021.04]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り9】 歌がつなぐ奄美と八重山−騒ぎ歌《六調》の系譜−

[2021.04]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り9】 歌がつなぐ奄美と八重山−騒ぎ歌《六調》の系譜−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  八重山には《六調節》(さまわ)という歌が伝わっている。これは、奄美諸島で盛んに歌い踊られる《六調》が伝わったものといわれている。奄美諸島北部の島々では、タネオロシ(餅貰い)などの祭や八月踊り、また様々な宴席の最後に必ずといっていいほど《六調》が踊られる。歌と三線、太鼓の伴奏に合わせて参加者が自由に乱舞するのである。これは沖縄のカチャーシーとよく似ている。奄美《六調》の三線の弾き方は、ギターのストローク奏法のように三線

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[2021.03]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り8】 沖縄の浜下り行事 −祓い清めと女の遊び−

[2021.03]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り8】 沖縄の浜下り行事 −祓い清めと女の遊び−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  3月になってずいぶん寒さも和らいできた。沖縄では旧暦の3月3日にハマウリ(浜下り)と呼ばれる行事が行われる。昨今の沖縄では、「ハマウリって、ビーチパーリ(ティ)ーのことでしょう?」とこたえる若者も多いようだが、ハマウリの本来の意味は海浜に打ち寄せる潮水で心身に付いた穢れを祓い清める行事である。  このハマウリ行事には由来譚がある。ある美しい娘のところに夜な夜な若い男が訪れてきた。母親は娘に男の身元を問うが、娘は答え

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