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#ブラジルフィールドワーク

[2019.02]ブラジルフィールドワーク #09 村々の手仕事の 美に魅せられて

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO 村々にひっそり残る手仕事の文化  奥地の農村で。小さな漁村で。ブラジルでは、あちこちにひっそりと、手仕事の伝統が息づいている。女性たちの手から手へ受け継がれてきた素朴な技が、布やかご、身の回りの道具などの日々の暮らしの品を作り出してきた。  ヨーロッパからの移民の子孫の多いブラジルには、遠いルーツを物語る手仕事も残されている。レース編みや手織物など、ヨーロッパでは既に失われてしまった文

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[2018.08]ブラジルフィールドワーク #03 ファヴェーラ ボランティア時代の思い出

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO  私のブラジルとの付き合いは1992年から2年ちょっとの間、サンパウロ市郊外のファヴェーラに住み込んで働いた時から始まる。ボランティア時代は、しばしば日本からの見学者を案内した。そうこうするうちに、だんだんうんざり思えてきたのが、こんな言葉だった。 「なぜファヴェーラの子どもたちの瞳はこんなに輝いているの?」「それに引きかえ日本の子どもたちは」「日本は豊かになって心の豊かさを失ってしまっ

[2018.10]ブラジルフィールドワーク #05 アマゾン シングー川流域 先住民消防団発進!

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO  いまこの原稿をアマゾンの森に囲まれた先住民族の村でハンモックに揺られながら書いている。NPO法人熱帯森林保護団体(RFJ)の代表・南研子さんに同行して、アマゾン川の主要支流のひとつであるシングー川流域の村々を3週間かけて訪ね歩いているところだ。  RFJは、森と川の恵みと共に生きる先住民族の支援を通してアマゾン熱帯林を守るという活動を30年に渡って続けてきた。私は通訳やプロジェクトのコ

[2019.06]ブラジルフィールドワーク #13 我々はブラジル原初の民

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO 同時代人として生きる 「違和感がある」。そんなコメントをもらって考え込んでしまった。毎年1ヶ月かけて訪問するアマゾン先住民族の村のようすを日本の知人に語った時のことだ。  たいていの村には寺子屋のような学校があり、教員の資格を得た村の若者を先生役に民族言語とポルトガル語の両方を使った授業が行われている。外の社会との物や情報や人の行き来は年々進んで、工業的な製品も徐々に入って来るように

[2020.02]ブラジルフィールドワーク #21 環境正義と環境レイシズム

世界で森が燃えている  森が燃えている。昨年6月は北極圏のアラスカ、シベリアで。8月はアマゾンが燃え始め、9月には東南アジアのボルネオ島やスマトラ島でも。10〜11月にはカリフォルニアが。そして9月にオーストラリアで始まった森林火災は年が明けてもまだなお、炎が収まる兆しがない。乾期の森林火災はオーストラリアでは自然現象のひとつだとはいえ、例年にない規模で拡大し続けている。  世界中で頻発し大規模化する森林火災の背景にあるのは、大気の高温化と乾燥化だ。火元の原因が自然発火では

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[2020.05]ブラジルフィールドワーク #24 ファヴェーラの人々の「ぶれない軸」 新型コロナ・パンデミックの世界で

文●下郷さとみ text by SATOMI SHIMOGO 写真●コズミ・フェリップセン photos by COSME FELIPPSEN  連載前回でカーニヴァルのことを書いたのが遠い昔のことのように思えてくる。あれから世界は一変してしまった。ブラジルで初めて公式に新型コロナウィルス感染者が確認されたのが、カーニヴァル終了翌日の2月26日。イタリア旅行から帰国したばかりのサンパウロに住む61歳の男性だった。2ヶ月後のいま、全国の感染者は4万3079人、死者2741人

[2020.03]ブラジルフィールドワーク #22 文化を盗まないで

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO 仮装の頭の羽飾りはだめ?  この号が出る頃には、ブラジルはカルナヴァル目前。今年は2月26日が四旬節・灰の水曜日なので、その前日までのおよそ1週間が祭り一色になる。といっても、お正月が過ぎればもう既にカルナヴァル気分で、そうこうするうちに毎年あるメッセージがSNSの中をめぐり始める。それは先住民族の人たちが発信する「apropriação cultural」に対する異議申し立ての言葉だ。

[2020.01]ブラジルフィールドワーク #20 ファヴェーラの呼び名

これって差別用語?  何年か前からよく耳にする言葉がある。「今はファヴェーラじゃなくてコムニダーヂって呼ぶんだよね」。この言い換え、新聞やテレビニュースの中では結構前から進んでいるし、会話中に口にしてからあわてて「使っちゃダメなんだった」と取り消す人もいたりして、そのたびになんだか違和感を感じている。  コムニダーヂは英語ならばコミュニティで、地域社会や共同体を意味する。何らかの性質を共有する人の集合体を表す言葉であり、「何の」の前置き無しでは漠然としすぎて意味が通らない。

[2019.12]ブラジルフィールドワーク #19 ルーラ元大統領の釈放

11月9日の朝、早起きをしてパソコンを立ち上げたら、ブラジルのニュースサイトの画面から「速報! ルーラ釈放」の文字が目に飛び込んできた。ブラジル時間の11月8日夕方のことだった。2003年から10年までの2期、8年間に渡って大統領を務めたルーラ(労働者党)が580日ぶりに帰って来た。

[2019.11]ブラジルフィールドワーク #18 「燃えるアマゾンの森」のニュースを読み解く

「乾季のアマゾンは灼熱砂漠だ」と言ったら、どれだけの人が信じてくれるだろうか。とりわけ今年のアマゾンは、息をするのも苦しいほどの半端ない暑さだった。乾き切った空気に喉がヒリヒリと焼き付いた。日中の気温は連日、軽く40度を超えて、湿度は10%ちょっと。いつにも増して本当に過酷な旅だった。

[2019.09]ブラジルフィールドワーク #16 26年目の カンデラリア虐殺事件

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO  その事件が起きたのは、サンパウロのファヴェーラでのボランティア生活の途中に日本に一時帰国していた時だった。あまりの衝撃の大きさに、日本のメディアでも盛んに報道されたのを憶えている。  1992年7月23日の未明、リオデジャネイロ市のセントロ(中心)地区にそびえるカンデラリア教会の建物の前で事件は起きた。当時、そこを寝ぐらにしていた70人以上のストリートチルドレンを男たちが自動小銃を乱射

[2019.10]ブラジルフィールドワーク #17 友が遺したもの 社会運動家、 ジョゼ・アラウージョ・リマ・フィーリョ

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO 生きることを誰よりも愛した人だった。ひとのため、社会のために働き、闘い、そして人生を楽しむことを忘れなかった。現代の医学ではまだ治癒の方法がない持病を抱えながらも、元気に生き生きと生きていた。今年の2月に会った時は「ブロッコ(路上のカーニバルグループ)連覇最高記録を今年は作るぞ」と張り切って街に飛び出して行った。はじけるような笑顔が目に焼き付いている。  6月頃から体調を崩しがちな日が続

[2019.07]ブラジルフィールドワーク #14 奴隷制度の記憶を刻む場所 リオデジャネイロ港湾地区

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO  リオデジャネイロ都心の港湾地区に、ブラジルにかつてあった奴隷制度の記憶を刻む場所がある。近年になって発掘された遺跡は、リオの新たな観光ポイントとして整備が進められてきた。  ブラジルは世界で最も遅くまで奴隷制度が続いた国だ。奴隷の輸入が禁止されたのが1883年。奴隷解放令が出されたのは1888年。長く続いたこの非人道的な制度は、131年たった今もブラジル社会に濃い影を落としている。たと

[2019.08]ブラジルフィールドワーク #15 ブラジルに名前を与えた木 リオデジャネイロ植物園

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO  リオデジャネイロで好きな場所のひとつが植物園だ。コルコバードの丘の上の展望台から見下ろすと、キリスト像の広げた右手の斜め後ろ方向に植物園の濃い緑が広がるのが見える。広大な敷地は面積140ヘクタールにもおよび、そのうち3分の2が森林保護区、残り54ヘクタールで世界の6500種の植物が植栽・展示されている。ブラジルの独立以前の1808年にポルトガル王室によって開設された。  展示エリアはゾ