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【連載 それでもセーヌは流れる 133】超メガコンサート男、 ジャン=ミッシェル・ジャールの大いなるメランコリア

文●向風三郎

1) ジャン=ミッシェル・ジャール自伝『メランコリック・ロデオ』(Robert Laffont 刊 2019年11月)

ジャン=ミッシェル・ジャール自伝『メランコリック・ロデオ』

(Robert Laffont 刊 2019年11月)

 今日まで世界で8千5百万枚のアルバムを売っているフランスの音楽アーチスト、ジャン=ミッシェル・ジャール(現在71歳)の自伝『メランコリック・ロデオ』は380ページの大著である。ともすればこの種の著名人自伝を手にすると「自分で書いたのか?」という疑念と、後付けの脚色美談を網羅したナルシスティックな自分史だろうという先入観が先立つ。ところが私の最大の驚きは、〝ジャールは書ける、筆が立つ〟ということ。ほとんど文学の領域である。それを断わるようにジャールはその序文でこう書いている:

仮に私の最初の書物が書かれるとすれば、それは小説になるだろうとずっと思っていた。初めての小説というのは結局のところその実体の偽装した反映である、ということも認識していたが。そんなことで私は自伝を書くということを自分に納得させた。(p15)

2) アルバム『幻想惑星(Oxygène)』(1976年)

アルバム『幻想惑星(Oxygène)』(1976年)

 ジャールは初著作を小説にせず自伝にしたが、その二つにはあまり違いがないのだ。彼は粉飾するだろうし、すべてを語ろうともしないだろうが、それでいいのだ。この一流の〝読ませる〟文章の魅力は、その表づらである華麗な国際スーパースターの生き様に陰影をつけ、題目どおりのメランコリーで包み込み、サクセスストーリーとは無縁の生きる痛さや悲しみを隠さない。その表情ある言葉はポッと出のものではない。ジャールが『幻想惑星(Oxygène)』(1976年)の世界的ヒットで注目される前、1973年、耽美的な自作自演歌手クリストフのためにこんな歌詞を書いている:

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