[2019.06]【連載 TÚ SOLO TÚ #229】数々の巨匠と演奏、名ベーシスト ルベン・ロドリゲス
文●岡本郁生
去る4月9日から12日までブルーノート東京にて公演が行われたエディ・パルミエリ・サルサ・オーケストラ(ちなみにご本人は絶対に〝サルサ〟という言葉は使わず、〝アフロ・カリビアン・ミュージック〟と呼んでいるのだが)。
パルミエリ御大をはじめ、ネルソン・ゴンサレス(トレス)、エルマン・オリベラ(歌)、〝リトル・ジョニー〟リベロ(コンガ)、ジミー・ボッシュ(トロンボーン)らによる素晴らしい演奏が繰り広げられたのだが、ここ何度かの来日公演といちばん違っていたのは、かれこれ10年ほどレギュラー・ベース奏者をつとめているルケス・カーティスが来なかったことである。なんでも、大学院の最終試験の日程と重なってしまったとのこと。パルミエリ楽団ともなると、メンバーは一流の人たちばかりなのでほかの仕事とバッティングすることも多く、そういった場合に備えて、常に控えのメンバーが2重3重に用意されている。そんな中から代わりにやって来たのはなんと、ルベン・ロドリゲスであった。
ルベン・ロドリゲスといえば、マーク・アンソニー、インディアをはじめ、セルヒオ・ジョージのプロデュースによるRMMレーベルの数々のヒット作に参加していた名ベース奏者である。いつもは主にエレキ・ベースを弾いている人なので、どうなるのか……? と、それも楽しみだったのだが、今回はアップライト・ベース(ベイビー・ベース)で、ノリノリの演奏を聞かせてくれたのである。シンプルで、余計なことは何もしない。が、とにかく、安定感・重量感が抜群。そして、歌心満点のソロを聞かせる。さすが、ニューヨークの超一流音楽家なのであった。
64年にニューヨークで生まれた彼は、父親の仕事の関係で5歳から10歳までをプエルトリコで過ごし、74年にニューヨークへ戻った。トリオものが好きだった父親に小さいころからギターを教えてもらっていたという。そんな彼にまずは、本格的に音楽を始めたきっかけについてうかがった。
「76年だったかな……ジュニア・ハイスクールの選択科目でタイピングか楽楽を選ばなければならなかった。僕は音楽を選んだんだが、ピアノをちょっとやって、あとは、アコースティック・ベースの担当になった。大きいし、うまく扱えなくて、そのときはすごくイヤだったよ。同じ年に、エレキ・ベースをやることになって、『おー、これならいいや』と。ギターはもうやってたから、これは気に入った」
ときは70年代半ば。ニューヨーク・サルサは絶頂期を迎えていた。同時に、ディスコ・サウンドも大流行していた。
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