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[2017.02]島々百景 #12 ジャワ島

文と写真:宮沢和史

グサン_ワルジーナ_宮沢

右グサンさん、左ワルジーナさん
(写真提供:宮沢和史)

 2001年9月11日8時46分、僕はインドネシアのジャワ島にいた。眠い目をこすりながらホテルのロビーに立ち寄ると、テレビの周りに集まっている人たちがとてもザワついている、観ているチャンネルはCNN。超高層ビルディングから巨大な煙の帯がものすごい勢いで空をグレーに染め広げている。「事故だ」そう思った。放送は英語だからところどころしか理解できないが、どうやら飛行機が衝突したらしい——。その時テレビを見ていた誰もがそう把握したに違いない。これは経験したことのない衝撃的な大事故だと ——。画面を見ているだけなのに自分の身に振りかかった惨事のように感じられた。体験したことのない恐怖感だ。しばらくしてもう一機の旅客機がWTCのツインタワーの今度は南棟に突っ込んだ。「!!」これは事故ではない……、人為的な事件!? 脳と心がまったく違う回路に接続されたような感覚になり、ショートしそうだった。これは人類が初めて体験する方法でのテロリズムであり、そこには憶測も含め様々な負の物語がうごめいていることを徐々に知っていくわけだが、表向きにはアメリカ合衆国を中心とした世界とイスラム教過激派との対立、という構図が一般的な捉え方だろう。国家というのは戦争などにより侵略、領有、統合があったり、一方で独立したりと、流動的に伸縮する共同体であり、過去がそうだったように今後世界地図がどのように変形していくのかは誰にもわからないが、宗教間の対立、怨念、というものは一向に妥協することなく、交わることなく、永遠に理解し合うことなく平行線のままなのかもしれないな、と諦念にも似た感情を改めて抱いた。言い換えれば、争いの火を絶やさないことで巨額の富を儲ける者たちがいる限り永遠に終結することはないのだと思った。

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