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[2018.01]スワヴェク・ヤスクウケとポーランド・ピアニズム

文●オラシオ text by HORACIO(通訳:杉浦 綾協力:ポーランド広報文化センター)

 CDが売れないという嘆きの声が響くようになって久しいが、それでもなお日本は世界でまれに見るフィジカル大国だ。世界中のありとあらゆるジャンルの音楽が、多種多様な音楽ライターによるライナーや歌詞対訳つきの国内盤CDでリリースされ続けるこんな国は、もはやほぼ存在しない。そんな我が国が世界に誇るべき音楽文化のひとつが、バラエティー豊かなコンピレーションCDの数々だろう。

 独自の切り口とストーリーでコンパイルされたアルバムは、私たちをリアルの音楽史と並行して存在するパラレル・ワールドに連れて行ってくれる。手前味噌になるが、私が選曲したポーランド・ジャズのコンピレーション『ポーランド・ピアニズム』(①)も、その末席に名を連ねることとなった。本コンピ制作が実現に至ったストーリーの主人公は、ピアニストのスワヴェク・ヤスクウケだ。彼なくしては、このアルバムも存在しえなかったと思う。

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 ヤスクウケは、昨年の年間ベストに数多く挙げられた『Sea』(②)を皮切りに『夢の中へ』(③)『モーメンツ』(④)と続けて3枚のスタジオ録音のピアノ・ソロを日本盤でリリースした。さらに昨年12月の駐日ポーランド大使館シークレット・ライヴをオノセイゲンが録音した『東京ソロ・コンサート2016』(⑤)も11月に発表された。日本人にとって、今もっとも身近なポーランド人ミュージシャンだと言っていいだろう。『ポーランド・ピアニズム』にも、これら4枚以外の彼の過去作から2曲を収録している。

 それに加えて、今年が第3回目の開催となるザ・ピアノエラ2017にヤスクウケが中欧勢としてはじめて出演したのは非常に大きなトピックだった。ピアノエラは日本人のコンパイル・スピリットがライヴの形に昇華したとも言える、夢のプロジェクトだ。前からヤスクウケを知っているわけではなく、そのコンセプトに惹かれて来場した観客のほうが圧倒的に多かったはずだ。

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