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[2019.09]ブラジルフィールドワーク #16 26年目の カンデラリア虐殺事件

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO

 その事件が起きたのは、サンパウロのファヴェーラでのボランティア生活の途中に日本に一時帰国していた時だった。あまりの衝撃の大きさに、日本のメディアでも盛んに報道されたのを憶えている。

 1992年7月23日の未明、リオデジャネイロ市のセントロ(中心)地区にそびえるカンデラリア教会の建物の前で事件は起きた。当時、そこを寝ぐらにしていた70人以上のストリートチルドレンを男たちが自動小銃を乱射しながら急襲して、8人の子どもが犠牲になったというカンデラリア虐殺事件である。

「路上で生きる子どもたちを存在させたあげくに、その子どもまでもを殺す社会だったのか自分たちの社会は」と、これまで目をそらしてきたことをブラジル社会に突きつけた衝撃的な事件だった。

 それから26年目の7月23日。毎年この日に開かれる式典に参加する機会を今年、ようやく得ることができた。そこには二度と同じことを繰り返させないと誓う多くの人々の姿があった。

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リオ都心の大通りの真ん中にそびえ立つカンデラリア教会

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司祭によるミサの形で式典が執り行われた


カンデラリア後も続く同様の事件

 朝10時。荘厳なカンデラリア教会の聖堂内に、貧困地域で子どもたちの教育活動に携わる団体のスタッフに引率された子どもたちが続々と入ってきた。「Se Essa Rua Fosse Minha(もしもこの通りが私のものだったら)」やサンマルチーニョ協会などのストリートチルドレンの支援活動を行う団体や、ファヴェーラで活動する団体の姿がいくつもあった。また、警察や犯罪組織の暴力によって息子や娘を失った母親たちの団体も複数参加していた。誰もが、遠い事件をいまのことのように噛みしめる表情をたたえていた。

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