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[2019.06]島唄継承 先人たちへリスペクトを贈り 未来へ島唄を継承する

文●岡部徳枝/写真●奥西 奨
text by NORIE OKABE / photos by SHO OKUNISHI

 2015年から沖縄市の「ミュージックタウン音市場」にて年に一度12月に開催されている「島唄継承」。沖縄民謡界に名を残す偉大な先人たちにリスペクトの意を表し、彼らが遺した名曲を現役の唄者が歌い継ぐ。そして未来へ島唄を継承していこうというイベントだ。毎回ある人物にフォーカスしていくシリーズ公演で、第一回は普久原朝喜、第二回は知名定繁、第三回は嘉手苅林昌と小浜守栄、第四回目は登川誠仁をテーマに開催。その人物と縁の深かった大御所や、背中を追いかける次世代が集い、唄い弾き、功績や人柄を語り、先人を偲ぶ唄会を繰り広げる。公演プロデューサーは、1981年生まれの唄者、島袋辰也。16歳で名嘉常安に師事、ソロ活動を経て28歳で知名定男に弟子入り。現在は県内外でライブを重ね、師範として多数の弟子を抱えるなど、沖縄民謡界の未来を背負って立つ実力派だ。「島唄継承」では、企画から演者へのオファー、選曲、当日の司会進行、ライブ出演まで多岐にわたる役割を務める。現在では県内外の民謡ファンから愛される重要イベントとなった「島唄継承」。その内側について島袋辰也に、自身が営む民謡酒場「わったぁやー」にて話を聞いた。

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島袋辰也

── そもそも「島唄継承」はどんなきっかけで始めたんですか?

島袋辰也 師匠である知名定男先生の話を聞く「知名塾」という飲み会が月に一度あるんですが、そこが始まりです。先生は昔からたくさんの先輩方と交流があったので、当時見たこと聞いたこと、いろんなエピソードをいつも僕らに聞かせてくださるんです。「この唄はあの人のこんな経験から生まれたんだ」とか、先生から聞かなかったら一生知らなかったような貴重な話ばかり。そんな「知名塾」はもう10年続いているんですが、5年前くらいかな、あるとき「これを僕らだけのものにしておいていいのか、もっとたくさんの人に伝えるべきじゃないか?」と。それでイベントを開催するのはどうかと沖縄市に協力をお願いしてみたら快諾してくれて。先生も「よし、みんなでやろう!」と喜んでくださって、そこからどんどん動き始めていった感じです。

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知名定男

── 毎回、人物にスポットをあてるというコンセプトが素晴らしい。

島袋辰也 やるからには20年も30年も続いていくイベントにしたくて、沖縄音楽界の偉人はたくさんいらっしゃるのでそこをテーマにするならずっと続けていけるだろうと。こだわりはトークコーナー。テーマの人物のことをみんなで語り合う。「誘い役」の定男先生には毎回出演頂いてますが、僕はこのイベントで「知名塾」のような場を作りたかったんです。会場の人も一緒に「知名塾」に参加している感じ。その人を深く知り、その唄が生まれた意味を知り、敬意を持つことで、より唄に感情移入できたり、また別の聞き方もできると思うので。

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徳原清文

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第4回「登川誠仁の世界」トークコーナー
(左から)金城安紀、前川守賢、徳原清文、知名定男、島袋辰也

── 出演者が歌う曲も島袋さんが決めるんですよね。毎回あの名曲は誰が歌うんだろう? という楽しみがあります。

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