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[2019.09]アルゼンチン・フォルクローレ音楽 伝統に宿る声

文●シルビア・イリオンド text by SILVIA IRIONDO

 アルゼンチン・フォルクローレ音楽は日ごとに、時の経過の中で形成されてゆく。人間と地の風景が相関し、人生、世界、人間の存在といった深い宇宙観を築いてゆく。そしてそれが音楽、ことば、芸術といった表現方法の中で生き、熟成され、再び生を得る。

 その過程においては、文化的ルーツ、歴史における自由な発想、各個人の持つ繊細さにインスピレーションを受けながら、作者不詳のコプラ、インディヘナの歌、作曲家の眼差しとして培養されてゆく。

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Silvia Iriondo(photo by Juana Ghersa)

 一国の文化が熟成されるうえで三つの大きな流れがある。

 匿名性:それは民族の魂と歴史が如実に反映された声である。複雑で広大な領土に宿る歌は豊かで、多様であり、手触り、言葉の綾、色彩に富んでいる。山、川、平原、砂漠、谷、海……。故郷と人々の生活、信じるもの、習慣、慣習……。死の意義、幸福、宿命、伝統……。

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