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[2020.09]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り②】 沖縄の臼太鼓−シマを支える女性たちの歌声−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)

 沖縄各地のムラには、ウタキ(御嶽)と呼ばれる聖空間がある。夏の祭りの時期にそこを訪れるとガジュマルやクロツグ、アカギなどが生い茂った鬱蒼とした原生林の中から、紺色の絣の着物をまとった数十名の女性たちの厳かで格調に満ちた歌声が聞こえてくる。一年でいちばん重要な区切りとなる夏の祭りにおいて、地域の女性たちが総出で円陣を組み、太鼓を叩きながら歌い踊る。これが沖縄の臼太鼓という芸能である。

 臼太鼓(ウシデーク、ウスデーク、ウシンデークなどと呼ぶ)は沖縄本島全域および周辺離島に分布しており、前回紹介したウンガミやシヌグなど、神祭りの翌日の直会(なおらい)の機会に踊られることが多い。このウシデークという名称は、九州にある風流系芸能「臼太鼓」に由来すると考えられる。しかし、九州各地の臼太鼓は男性による太鼓踊りであり、沖縄とは芸態が全く異なっており、直接的なつながりがあるとは思えない。この「臼太鼓」という名称が、どのような経緯で日本本土から沖縄の地に伝わってきたのかはいまだに謎である。

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