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[2021.02]連載 レオナルド・ブラーボ【リズムで旅するアルゼンチン音楽 パタゴニア編

文●レオナルド・ブラーボ
text by Leonardo Bravo

 パタゴニアはアルゼンチンで最も広大かつ人口の少ない地域。この広大な土地は1880年、政府軍はインディヘナの大半を抹殺した「荒野の征服」を経てアルゼンチンの領土に加えられた。

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 インディヘナの消滅によって文化的・音楽的表現もほとんどが消滅にいたった。今日パタゴニアのインディヘナは他州からの移住者がほとんどで、極わずかな人数にまで減ってしまい、パタゴニア音楽は研究の余地が大いにある。パタゴニア音楽の起源はこの土地に大きな軌跡を残している先住民のマプーチェ族とテウェルチェ族の先祖から伝わる歌と儀式にある。

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 現代のパタゴニアのアーティストたちはカアニ、ロンコメオを通じて新しい音を模索し、現在パタゴニアに居住する者たちのアイデンティティを表現してきた。ソロ、デュオ、グループでの演奏が一般的で、ギターをベースとしてクルトゥルンといったアルゼンチン北西部とも共通するインディヘナの打楽器を加えていくのが一般的となっている。

●カアニ(Kaani)

 カアニはテウエルチェ族の祝祭において最も崇高なもので、パタゴニアに住む原住民が先祖代々から伝えてきた音楽として知られている。この祝祭の儀は重要な物事起こる際、例えば春の祝祭では神にグアナコ猟の豊猟を祈る儀式が行われる。通常男性が舞踊を務め、女性が打楽器と管楽器で音楽を奏でる。

●ロンコメオ(Loncomeo)

 ロンコメオはテウエルチェ族、マプーチェ族の舞踊として知られている。舞踊には祈祷の意が込められており、「男性だけによって踊られるパントマイム」といった性質を持つ。舞踊は聖なる楽器クルトゥルンの演奏に合わせて行われる。舞踊が披露される場はマプーチェ族のスピリチュアルな儀式であるンヒジャトゥン(Ngillatún)と呼ばれている。

 ロンコメオは半裸で裸足の男性たちが群舞で踊る。クルトゥルンのリズムに合わせ、ニャンドゥ(*)やチョイケ(*)の動きが擬似されている。先住民はこの舞踊をスピリチュアルな儀式や、新たな門出そしてコミュニティのひとつの時代の終わりと位置付けた。

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