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[2021.05]【新連載 シコ・ブアルキの作品との出会い①】ワイングラスなのか?「黙れ」なのか?—シコ・ブアルキ作《Cálice》

文/訳詞●中村 安志

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プロフィール●音楽大好き。自らもスペインの名工ベルナベ作10弦ギターを奏でる外交官。通算7年半駐在したブラジルで1992年国連地球サミット、2016年リオ五輪などに従事。その他ベルギーに2年余、昨年まで米国ボストンに3年半駐在。Bで始まる場所ばかりなのは、ただの偶然とのこと。ちなみに、中村氏は日本の有名なフルート奏者、城戸由果さんの夫君でもあります。

 1964年の軍事クーデターから、今年で57年を迎えるブラジル。85年の民政移管までの約20年間は、「ブラジルの奇跡」とも呼ばれた経済発展を享受しながらも、人々の表現の自由が規制された厳しい時代でした。

 高度成長の終盤となる73年。シンガーソングライターのシコ・ブアルキが「Pai, afasta de mim este cálice(主よ、この杯を我から遠ざけたまえ)」という、聖書の中の有名な言葉を歌詞に織り込んだ歌を出したところ、軍当局によりこれが発禁されたという有名なエピソードがあります。73年5月にジルベルト・ジルとの公演寸前に禁止が決定し、当局が劇場に踏み込みマイクを切断してしまうという出来事もありました。そして、この曲のレコード録音(ミルトン・ナシメントとの共演)が許可されたのは、6年も経過した1979年のことです。

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