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[2018.01]久石 譲×三浦一馬が 探求するバンドネオンの新しい可能性

文●小沼純一 text by Jun-ichi Konuma

 去る10月24〜25日、バンドネオン奏者・三浦一馬は、久石 譲の新作を初演した。「MUSIC FUTURE」は、久石譲が2014年から、この列島ではほとんどコンサートで演奏されていない現代作品を積極的にとりあげているシリーズ。デヴィッド・ラング、ガブリエル・プロコフィエフらの作品によるプログラムの最後をこのバンドネオン・コンチェルト《The Black Fireworks》が締めくくる。

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—— お二人が一緒にやるきっかけから教えてください。

久石 去年、2016年「MUSIC FUTURE Vol.3」に三浦くんが聴きに来てくれたんです。終演後、楽屋で会ったのですが、バンドネオンの譜面などを持ってきてくれて。そのとき、もう瞬間的に、来年はバンドネオンだって —— アイデアは何もないんですけど、バンドネオンでミニマル・ミュージックは誰もやってないな、面白いかもとひらめいた。それがきっかけですね。

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三浦 「MUSIC FUTURE」、音楽の世界で生きている中で最先端な部分を見ることができるコンサートだと思っていました。初めてお会いして、ご挨拶させていただいた時、「ねぇ、バンドネオンの曲を書いていい?」ってその場で仰ってくださって、嬉しかったと同時に、本当かなぁとも思ったわけで(笑)。まさかこんな急展開で作品を書いていただき、本当にすごい感激しています。

久石 何度かバンドネオンを使った曲は、映画などいろんなところで書いてはきてるんです。「Tango X.T.C.(タンゴ・エクスタシー)」という曲を書いた時からこだわるようになったし、楽器への思い入れもつよく持っていた。あと、なんて言ったらいいんだろう、呼吸かな。アコーディオンにはでない独特の呼吸感みたいな。それがすごく好きだったんですね。人間的な……やはりフレーズが独特なんです。蛇腹を返す時にも情感が出るので、弓やボーイングを返すのよりも、もっとはっきり出るんですよね。人間が歌っている感じがすごくある。歌かなぁみたいな。それがやっぱり一番面白いなと思いますね。

三浦 今回作曲された作品でなら、第二楽章「Passing Away in the Sky」で、ここがすごく人間っぽくって仰ったところがありました。具体的にバンドネオンという楽器に対して、あるいは音色に対して、今おっしゃっていただいたことをすごく象徴的に語って下さったなと、僕はお話をうかがっていて、思いましたね。

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