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[2019.07]ブラジルフィールドワーク #14 奴隷制度の記憶を刻む場所 リオデジャネイロ港湾地区

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO

 リオデジャネイロ都心の港湾地区に、ブラジルにかつてあった奴隷制度の記憶を刻む場所がある。近年になって発掘された遺跡は、リオの新たな観光ポイントとして整備が進められてきた。

 ブラジルは世界で最も遅くまで奴隷制度が続いた国だ。奴隷の輸入が禁止されたのが1883年。奴隷解放令が出されたのは1888年。長く続いたこの非人道的な制度は、131年たった今もブラジル社会に濃い影を落としている。たとえば人種間の激しい社会格差は奴隷制度の典型的な負の遺産だと言えるだろう。今へと連綿と連なる過去の歴史を、遺跡をめぐりながらたどってみたい。


奴隷が「荷下ろし」された桟橋跡

 2011年、港湾地区の古びた建物に囲まれた広場の下から石積みの桟橋が発掘された。大西洋を行き来した奴隷船が、かつてその「積み荷」を下ろしたバロンゴ桟橋(Cais do Valongo)である。アフリカと南米大陸を結ぶ奴隷貿易の歴史を刻む場所として、桟橋跡は2017年にユネスコの世界遺産に登録された。ブラジルに21ヶ所ある世界遺産のうち、最も新しい登録遺産だ。

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