[2020.03]世界を席巻するラテン音楽パワー

文●岡本郁生 text by IKUO OKAMOTO

 毎年全米で1億人が見るというナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のスーパーボウル。去る2月2日に行われた「第54回スーパーボウル」のハーフタイム・ショウは、現在の米国社会の現実を如実に反映した内容であった。メイン出演者はシャキーラとジェニファー・ロペス(以下、J.LO)というラテン・ディーヴァふたり。力強くヴァイタルなそのパフォーマンスは、米国はじめ世界を席巻しているラテン音楽のパワーを象徴するものであり、同時に、トランプ米大統領が先導する米国社会と世界の分断に対して疑問を投げかけ、より平等で平和な社会を目指そうというポジティヴなメッセージだったといえる。

 センター・ステージにまず登場したのはシャキーラだ。

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 赤のコスチュームで「シー・ウルフ」からスタート、バリバリのダンスでキメたあとは一転して弦楽をバックにギターを弾きながら「エンパイア」。続いては、彼女のバックグラウンド(レバノン系)を意識したアラブ・テイストの「オホス・アシ」、さらにダンサーを従えての「ホウェネヴァー・ホウェアエヴァー」と来て、今度は、ブガルー・カヴァーの「アイ・ライク・イット」。ステージ上に横たわると、バッド・バニーが登場して彼女のまわりをまわりながらラップする。この曲はもちろん60年代半ば、ピート・ロドリゲスのヒットだが、昨年、カーディB、バッド・バニー、J・バルビンの3人名義でカヴァーして大ヒットさせたものである。続いては、トランペットを持った男性ダンサー6人とともに2016年のヒット「チャンタヘ」。マルマの代わりをつとめたのはもちろんバッド・バニーだ。もともとレゲトン曲だが途中からサルサにチェンジ、そして最後は「ヒップス・ドント・ライ」。アラブのザグルータも披露しながら、全員とポーズを取り「ノー・ファイティング!」とシャウトした。

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