見出し画像

[2018.11]島々百景 #33 バリ

文と写真:宮沢和史

画像1


 島々の歴史を改めて調べてみると、その多くは侵攻、侵略による上書きによって年表が書き進められる場合が多い。人間は自分の生命、老いの速度でしかものを感じ取ることができないから、現在世界情勢はグラついていると認識しながらもなんとか均衡を保っていると思いがちだが、世界を巻き込んだ戦争からまだ73年しか経っておらず、その間にもあちこちで数え切れないほどの紛争、戦争が巻き起こっているのだから、今の均衡を俯瞰から見たら、人類の争いの歴史のつかの間の谷間の静寂なのかもしれない。それは何も島に限ったことではないが、周囲を海に囲まれている島々では侵攻=上陸なわけで、上書きされていく感覚は大陸以上に鮮明であり、島民一人一人が身をもって実感する現実的なものであると想像できる。これまでにこの連載で取り上げてきた琉球弧の島々、サハリン、ジャマイカ、キューバ、前回のハワイしかり。したがって、今後どのようにそれぞれの地の情勢が塗り変わっていくのかいかないのか断定できないが、自分がこの目で見たその島の息吹を自分なりの言葉で伝えられたらと思っている。

ここから先は

2,736字 / 3画像
このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…