[2019.05]【連載 TÚ SOLO TÚ #228】追悼 パチャンガのレジェンド ジョー・キハーノ
文●岡本郁生
♪最近のバリオでの論争は/パチャンガをどう踊るか/チャランガとパチャンガを混同してるんだ/チャランガっていうのはイケてる楽団のこと/パチャンガはいま流行ってるダンスのことさ/だけど、これでわかるだろう/何がチャランガでパチャンガはどう踊るか……
ジョー・キハーノの1962年の大ヒット曲「ラ・パチャンガ・セ・バイラ・アシ(パチャンガはこう踊れ)」はこんな歌詞で始まる。
59年、キューバ革命が起こったその年に、エドゥアルド・ダビッドソンが作曲、オルケスタ・スブリメが録音した「ラ・パチャンガ」がキューバで大ヒット。その波はすぐにニューヨークにも押し寄せた。パチャンガというジャンルは、ソン・モントゥーノやドミニカ共和国のメレンゲなどをミックスしていわゆる汎カリブ的な音として50年代半ばごろに誕生していたらしいが、この楽曲のヒットによってアッという間にパチャンガ・ブームが巻き起こったのである。ソン、マンボ、チャチャチャ……と、ラテン音楽界におけるブームはそれまですべてキューバで発祥しニューヨークなどを経由して世界へと発信されていったわけだが、キューバ革命とそのあとに続く国交断絶によって、その図式は大きく変わることになる。「ラ・パチャンガ」はその直前にニューヨークへ滑り込み、人気が大爆発することになった。
Joe Quijano and His Pacganga - Cha Cha Orchestra
『LA PACHANGA SE BAILA ASI』(1962年)
このときブームを先導したのが、チャーリー・パルミエリ(ピアノ)とのちにファニア・レコードの副社長となるジョニー・パチェーコ(フルート)が中心となって59年に結成したチャランガ・ドゥボネイやホセ・ファハルド楽団などのチャランガ楽団だった。
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