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[2017.08]風を奏でる音楽家のダイアリー #02 静寂

文●ジョアナ・ケイロス

 「嗚呼、月よ。なんて美しいのだ。満月、下弦の月、三日月、どんな姿も同じように美しい」

 親愛なる友人メリナ・ムラザニが歌っているの聞いて知った曲で〝牛(boi)〟がそう歌う。異議を唱えようがないほどに、月は美しい。私にだけでなく、たくさんの人に特別な効力をもたらす、今日は豊潤な満月。こんなにも完全な美しい姿を晒し、輝きを放つその姿に無関心ではいられなくて、つい見とれてしまう。ビル群に囲まれ車社会に生きる忙しない私たちの生活に、自然の魔法がさあーっと道をあけてくれる。歩みを止めて、それを祈るように崇めてしまう。一時の静寂。雑音に溢れた生活にひとときの平和が訪れる。

 引き寄せられるがまま月について行ったら別の生存次元を提示されそう。もしくは、私の中の異なった自分を発見させてくれそうな気がする。現代の私たちは急いで生きていて、自分の使命を理解することなく、他の時代の声に耳を傾けることなく、人生はあっという間に過ぎていく。月からは見えるだろう、私たちがびっくりした蟻みたいに、行き先もわからず走り惑う姿が。

 祖母が、なぜなのかよくわかならいけど、月のことを「チア(おばちゃん)」と呼んでいた。それは親しげで、信頼のできる長年の友人のようだった。

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