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[2017.03]ロウレンソ・ヘベッチス〜バイーアのリズムで、新しくて現代的で、非常にブラジル的な創造をする。 新世代ブラジリアン・ラージ・アンサンブルを提示する今最も注目される音楽家。

特集:インディー・クラシックとその周辺の注目のシーン

文●宮本剛志
texto por TAKESHI MIYAMOTO

 北米でロバート・グラスパーやケンドリック・ラマーらによってジャズとヒップホップが相互に関係を強めつつある近年、ヨーロッパ出身ではティグラン・ハマシアンやアヴィシャイ・コーエンらによってジャズは民族的な音楽とも融合が進んでいる。そんなタイミングでブラジルから現れた86年生まれのロウレンソ・ヘベッチスの音楽は、まさしく現状への南米からの返答といえるだろう。モアシール・サントスの系譜にあってマリア・シュナイダーにも影響を受けたラージ・アンサンブル、アフロブラジルのリズムであるカンドンブレ、ケンドリックやディアンジェロに影響を受けたというビート感覚が混在した作品で新世代の南米ジャズを印象付けたギタリスト/作曲家/アレンジャーである彼に、音楽と の出会いや、バークリーへの留学、そして今作のプロデューサーを務めたアート・リンゼイについて話を聞いた。

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©Ana Carranca

—— 音楽との出会いや学びについて教えてください。

ロウレンソ・ヘベッチス 音楽と出会ったのは幼い頃、両親の持っていたレコードを通じてです。 母が好きだったミルトン・ナシメント、カエターノ・ ヴェローゾ、ムタンチス、ヒタ・リーをよく一緒に聴いたことを覚えています。父とよく聴いたのはジョルジ・ ベンやビートルズ、レッド・ツェッペåリンですね。ギターのレッスンを受けに学校に通うようになったのが11歳か12歳の頃。もう少しするとヒップホップに深くはまるんですが、 同時にジャズのインプロを学んだり、バーデン・ パウエルやハファエル・ ハベーロといったブラジルのギタリストにも没頭していました。そんな時期にモアシール・サントスの音楽に出会ったんです。 ぼくは瞬く間にアレンジに魅了されてしまいました。まだ自分がそれをアレンジと呼ぶことさえ知らなかった頃です。そうして全く新しい世界が目の前に開きました。ぼくは宗教を信じませんが、 モアシールの音楽は神聖なものだと思ってます。初めて聴いた時からそう感じました。

 バークリーに行ったのは、学ぶことに没入する必要があると感じていたからです。どんな音楽も教材も楽譜も何でも手に入る状況で育った世代ですが、誰かと一緒に学ぶ以上のものはありません。そこでは世界中から集まる才能ある音楽家と知り合いました。だからこそブラジル人音楽家であることの意味をより深く理解するようになったんです。

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©Ana Carranca

—— 同じくカンドンブレやモアシールに影響を受けているレチエリス・レイチにも学んだそうですね。

ロウレンソ・ヘベッチス 彼のグループであるフンピレスのコンサートがそれはもう素晴らしくて、終演後すぐに彼に会いに行ったんです。それまで考え続けていた様々な疑問に対して答えが見つかった気がして。その直後に彼らの最初のアルバムがリリースされ、そこから自分が聴ける全てを理解しようとしました。そして採譜したノートと無数の質問を抱えてまた会いに行くと、彼はモアシール・サントスの楽譜を取り出しながら「今まで誰も私の作曲法を知りたくて訪れるものはいなかった。君がもし興味があるなら、最初から教えよう」といってくれたんです。その夏の滞在で彼が教えてくれたのは、パーカッションを起点にして作曲する方法でした。具体的には、フン(カンドンブレで使う低音の太鼓)のメロディーがベースラインになりえるとい うこと、アギダヴィ(バチ)でアタバキの皮を叩く音はサックスのフレーズと繋がり一体となること、アゴゴによるクラーベはメロディーの分岐点のガイドとなることなどです。

 バイーアのリズムや、楽器、演奏方法はぼくにとって全く新しいものではありませんでした。しかしながら、ストリートのものでありカンドンブレの儀式のものでもあるバイーアのリズムが、新しくて現代的で、リズムや本質の面で非常にブラジル的な新しい何か創造をする素材になり得ることに気づかせてくれたのが彼でした。

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