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[2019.03]【連載 それでもセーヌは流れる 122】映画という枕詞の要らぬ大音楽家ミッシェル・ルグランの死

文●向風三郎

1) 2013年版自伝"RIEN N'EST GRAVE DANS LES AIGUS"2

2013年版自伝"RIEN N'EST GRAVE DANS LES AIGUS"

2) 2018年版自伝 "J'AI LE REGRET DE VOUS DIRE OUI"2

2018年版自伝 "J'AI LE REGRET DE VOUS DIRE OUI"

 1月26日、86歳でこの世を去った音楽家ミッシェル・ルグランは、近年に2冊の自伝本を出版した。2013年の〝Rien n'est grave dans les aigus〟(音楽用語的には「高音部にはまったく低音がない」、口語的には「緊急事だが全く大したことはない」という意味。姉クリスチアンヌ・ルグランのために書いた1999年発表曲のタイトルから。日本語訳され『ミッシェル・ルグラン自伝』として2015年にアルテス・パブリッシング社から発売された本の原著)と、2018年9月に出たばかりの〝J'ai le regret de vous dire Oui〟(「悔しいけれどあなたにウイと言おう」、イザベル・オーブレのために書いた1997年発表曲のタイトルから)。どちらの元タイトルの曲もフランスでも知る人ぞ知るで、ミッシェル・ルグラン通でなければわかるまいというレベルの書名であるが、その含蓄するものは深い。両書ともフランスの映画音楽専門家として著名なステファヌ・ルルージュが共著者となっていて、出版社は違えども内容は重複する部分がある。つまり後者が前者の大幅増補改訂版となっているのだが、2013年と2018年という5年のインターバルで自伝を2冊出したのは、この5年の間にどうしても自伝に書き加えなければならない大事件があったからだ。最大の事件は、50年越しの恋が実り、2014年9月、女優マシャ・メリルと結婚(新郎82歳、新婦74歳)したことだった。これによって老作曲家の人生のハッピーエンドが確定したのだから、この章を加えずにはいられなかったのだろう。増補版でマシャのことは三章(!)に分かれて綴られている。そしてこの本のタイトルの「悔しいけれどウイと言おう」は、反語的にマシャとの結婚式の「ウイ」の無上の喜びを表現したものと解釈されるのである。ルグラン人生最高のウイとして。

3) マシャ・メリルがルグランとの50年越しの恋を綴った手記本『ミッシェルと私』(2017年)2

マシャ・メリルがルグランとの50年越しの恋を綴った手記本『ミッシェルと私』

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