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[2018.10]【連載 それでもセーヌは流れる 117】タトゥーが再訪するオペレットと30年代ジャズ・マルセイエ

文●向風三郎

(先月号に続く) 4年前の2014年、マルセイユ(正確にはラ・シオタ)のバンド、ムッスー・テ&レイ・ジューヴェンが、両大戦間1930年代にフランスで全国的な成功を収めたマルセイユ・ミュージカル・レヴュー(オペレット・マルセイエーズ)の数々の歌をカヴァーしたアルバム『オペレット』(キング・インターナショナルから日本盤)を発表した。このアルバムに関連した同バンドリーダーのタトゥーへのインタヴュー記事は本誌2014年8月号の本連載に掲載されている。北部フランスとりわけパリ圏の人々にとって「夢の異郷」であった南仏プロヴァンスとその中心マルセイユは、1936年人民戦線政府による有給休暇の制度化(ヴァカンスの始まり)によって手の届く夢の地になった。オペレット・マルセイエーズの南仏訛りの歌の数々は、昭和戦後のがむしゃらに働いていた世代が聞いたハワイアン・ミュージックのように楽園憧憬を刺激するものだったかもしれない。ヴァンサン・スコット(マルセイユ出身作曲家)、ルネ・サルヴィル(トゥーロン出身作詞家)、アンリ・アリベール(カルパントラ出身歌手)のトリオが制作上演した7編のオペレット・マルセイエーズは、舞台がすべてマルセイユおよびプロヴァンス地方であり、ペタンク、ブイヤベース、パスティス種、カランク、アイオリ、地中海と太陽といった土地の名物と情緒を織り込んだ楽天的ミュージカル・レヴュー。タトゥーはその時のインタヴューで、そのように強調された観光絵はがき的なファクターだけではなく、その歌に含まれた地方人視点ならではの社会風刺性や中央権力への皮肉に注目してほしいと語気を強めた。それは21世紀的今日にも決して色褪せることのないマルセイユ批評眼であり、俺たちのバンドのオリジナル曲だと言っても通用するようなヴィヴィッドさがある、と。

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