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[2019.10]【連載 TÚ SOLO TÚ #233】 フアン・ルイス・ゲーラ 5年ぶりの新作はあるがままのエッセンスが満載

文●岡本郁生

 かつて一世を風靡したスターが相変わらず活躍しているのを見るのはやはり嬉しい。マーク・アンソニーしかり、アルバムこそ何年も出していないもののコンスタントに活動を続けていたドミニカ共和国のスーパー・スター、フアン・ルイス・ゲーラが5年ぶりのニュー・アルバム『リテラル』を発表した。

「この最新作は、ある意味で、『リテラル(「文字どおり」の意)』であることのエッセンスを集めたものなんだ」と彼はAP通信のインタビューに答えている。「娘のパウリナがいつもその言葉を使う。『パパ、文字どおりよ』と。これがアルバム・タイトルにピッタリだと思った。何も付け加えずにあるがまま。とてもモダンで現代的でカッコいい言葉じゃないかと」

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Photo by Enric Minguillón

 4月4日にリリースされた先行シングルの「キティプン」は地元ドミニカ共和国とプエルトリコで1位、ビルボード誌「トロピカル・ソング」チャートで4位を獲得し、5月末に発表されたアルバムは「トロピカル・アルバム」で7位に。ゲーラ本人とキーボード奏者のジャニナ・ロサドの共同プロデュースであり、録音はドミニカ共和国の自身のスタジオとロンドンのアビーロード・スタジオで行われている。パーカッションのフアン・デ・ラ・クルス〝チョコラーテ〟はじめバンドは名手ぞろい。ロジャー・サヤス、アダルヒサ・パンタレオンという在籍30年以上となるコーラス・メンバーを中心とした完璧なコンビネーションによるしなやかなサウンドが素晴らしい。そして何よりも、ゲーラの声が伸びやかでまろやか、彼ならではの世界を展開している。とはいえ、ゲーラ本人によれば、今回は特に「若者たちにアピールすること」を目指したという。

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