[2018.03]【短期連載】 The Latin Music is a Tramp! #8 ロベルト・フォンセカ
文●山本幸洋
90年代末にヒップ・ホップを取り入れた新しいキューバンのスタイルで颯爽とデビューし、一方でキューバ音楽が世界的にブームだった50年代のスタイルで2000年代に再び世界的な関心を呼んだブエナ・ビスタ・ソシエル・クルブで超ベテランを支えたり、ジャイルズ・ピーターソンの肝いりによるデスカルガ・セッションでリーダー格となったり、古典から現代まで様々なスタイルでキューバ音楽を支えているピアニスト:ロベルト・フォンセーカ(75年生まれ)。日本盤も何枚も出ているし、何度も来日してお馴染みの存在である。今回(17年9月)の来日公演は16年末にリリースした『ABUC』を引っさげての登場だ。(17年9月19日、都内にて。協力:ブルーノート東京、通訳:坂本悠)
写真提供/BLUE NOTE TOKYO 撮影/古賀 恒雄
—— インパルス!からのリリースです。
ロベルト (所属するマネジメント会社)モントゥーノにとって初めてのキューバ人ミュージシャンとなったことに誇りを感じてるよ。
—— ジャズを代表するレーベルですから、ジャズ好きにもロベルトさんの音楽がより届いていくと良いですよね。
ロベルト うんうん、ジョン・コルトレインやチャーリー・ヘイデンらジャズの巨匠たちの系譜にボクの名前が連なることに対して責任を感じるし、なによりも光栄だ。
—— 『ABUC』のコンセプトは?
ロベルト 前作より良いものを作ろうと考えて浮かんできたのが、キューバ音楽の現代を担っている一ミュージシャンとしてのロベルト・フォンセカの集大成としてキューバ音楽を振り返ってみるということなんだ。お判りのようにタイトルはCUBAの逆さ読みだけど、キューバ音楽を現代から遡るというコンセプトを表しているんだ。
—— え? てっきり「エアジンairegiN」とか「エメノンemaNoN」とかビ・バップのオマージュかと思ってました(汗)
ロベルト いや、そうじゃないんだ。40〜50年代まで遡っていくということさ。
—— ではトップにレイ・ブライアントの「クバーノ・チャント」を持ってきたのは?
ロベルト 曲順に関しては、書籍みたいに順繰りではなく曲のダイナミズムを重視した。「クバーノ・チャント」を選んだ理由は、キューバ音楽のキーワードの一つとしてジャズがあり、ボクがアメリカのジャズに捧げるものとしてキューバの要素が含まれているジャズを選ぶのが良いということなんだ。レイ・ブライアントはアフリカン・アメリカンだけどキューバに踏み込んでいるからね。
—— ジャズに対するキ ューバ音楽の影響について考察してください。
ロベルト キューバ音楽がジャズの影響を受けているのと同じようにキューバ音楽もジャズに影響を与えていると思う。異なった音楽要素を得て発展していくものだと思うんだ。アメリカの音楽にキューバのリズムが深く入っていることはあまり知られてないと思うんだ。これからは、それを知ってほしいね。ファンキー・ジャズはそもそもキューバ音楽のリズムをベースとしているし、アフリカにルーツを持っていることも共通しているし。
Roberto Fonseca / ABUC Impulse! 00602557095227(2016)
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