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[2019.01]パンチョ・アマート キューバの国宝的トレス奏者、待望の再来日!

文●太田亜紀 text by AKI OTA

 今年は日本とキューバ外交関係樹立90周年、キューバ解放60周年という日本とキューバにとって意義深い年。そんな年にふさわしいビッグ・アーティストが久々に来日する。パンチョ・アマートは現在、キューバ国内外の批評家に現代最高のトレス奏者と評される。その功績が評価されキューバ政府から2010年キューバ音楽大賞が贈られた。キューバ音楽の歴史、伝統のリズムやトローバ、クラシックギターやピアノのモントゥーノまで徹底的に研究。現在はキューバ発祥の複弦3コースのシンプルな外見でありながら実に奥深い世界を持つ弦楽器、トレスを後世に伝える教育者としても活躍している。

 2006年ハバナの国際ジャズフェスのオープニングでチューチョ・バルデスのゲストとしてラウー奏者のバルバリート・トーレスとともに出演したときの映像を見たが、早弾きや技巧だけではない。その味といい、キューバらしさ(クバニア)といい、とにかくインパクトのある演奏だった。

 ハバナ大の学生だった1971年、グルーポ・マングアレを立ち上げ、リーダーとして世界各地を公演。チリではヌエバ・カンシオンのビクトル・ハラやインティ・イリマニとも交流し、ケーナやチャランゴなど当地の楽器も習得するなど大きな影響を受けたという。その後アダルベルト・アルバレス・イ・ス・ソンを経て2000年に自身のグループ、カビルド・デル・ソンを結成。この伝統的なソンのセプテート編成で年明けから日本ツアーを敢行することになった。その革新的な奏法に隠された秘密、来日公演のみどころをたっぷり語ってもらった。

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—— トレスとの出会いは7歳のときですか?

パンチョ・アマート 僕が通っていた小学校の先生が、僕が音楽に興味があることを父に話してくれた。僕が住んでいた地域は田舎で、ソンやグアヒーラ(農民音楽)が盛んだった。それで父がトレスを手に入れて家に持ち帰ったのだけれど父ははじめ、それがギターだと思っていた。形が同じだから。でも弦は違う。それで遊びのなかでトレスを弾き始めた。それがトレスとの出会いだった。

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