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酒井尚子 ジャズとR&Bが重なる新しいメロウネス

文●大塚広子 text by HIROKO OTSUKA

 耳に残るメロディと清らかな声の響きから感じとれる親近感ある7つの唄。結婚式で友人に贈るために書いたというラスト曲をはじめ、これまで大切に書き留めてきたというこれらの楽曲は、日常に寄り添う心地よいものだが、同時に元々彼女が持っているキャリアや音楽性を示した耳障りとなっている。前半4曲で味わえる石若駿の多彩なプロダクションや黒田卓也の美しい音色は、彼女自身の世界観を表現するために自らの主導で引き出されたといっていい。当初予定されていたジャズアレンジをひっくり返し、自身のルーツであるヒップホップのニュアンスを石若に提示したり、黒田の魅力はバラードだとはっきり見定め、古風な日本語詞の楽曲で抜擢し垢抜けたエフェクトを施すなど、彼女ならではのやり方で曲作りは進行していった。そんな酒井尚子の持つ音楽性に迫った。

—— NYではニュースクール大学に通っていましたね。どんな環境でしたか?

酒井 クリス・ターナー、ジャマイア・ウィリアムス、ベッカ・スティーブンス、黒田卓也、ジェシー・ボイキンス三世、少し後から入ってきたホセ・ジェイムスなど、今のジャズシーンを引っ張るメンバーと同期でした。ロバート・グラスパーは卒業生でしょっちゅう来ていて、後輩のソロに〝Shame on you!〟と言って野次をいい意味で飛ばしていましたね。卓也くんとギターの友達と一緒にブルックリンのコアなバーでライヴをよくしていて、パトリース・ラッシェンの80sの楽曲をアレンジして歌ったり、グラント・グリーンなどのソウルジャズも彼らはカヴァーしていました。

—— 当時からニュースクールでは、スタンダードなジャズとは違う表現方法が根付いていたんですか?今でこそベッカ・スティーブンスのような自由な歌唱スタイルがジャズシーンで浸透していますが。

酒井 私たちの世代前後くらいから、〝ジャズじゃなくても自分らの音楽やったらええねん!〟みたく生徒たちで言い合っていたのをよく覚えています。ジャズ・アンド・コンテンポラリーミュージック科、という名前なので、ジャズでなくてもコンテンポラリーでいいんだ、と。自分たちの接してきたリアルな音楽を、ジャズを通して自分なりの音楽として表現したい人が集まっていましたね。白人の女の子のロックシンガーもいましたし。好きなことをやりたいようにやったらいい、という雰囲気に満ちていました。

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