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[2019.06]【連載】タンゴのうた 詩から見るタンゴの世界 第17回 古道具屋(カンバラーチェ)

文●西村秀人 text by HIDETO NISHIMURA

歌のタンゴ史の中で社会派タンゴとして筆頭にあがるこの曲。語りつくされた感のある曲ではあるが、実はまだまだ発見がある。

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 徹底的に世の中を皮肉ったエンリケ・サントス・ディセポロ作のこのタンゴ、実は映画の挿入歌で、マリオ・ソフィッチ監督、リベルタ・ラマルケ主演の映画「バンドネオンの魂」のため1934年に作られた。映画ではエルネスト・ファマがフランシスコ・ロムート楽団のバックで歌ったのだが、この曲のことを知った女性歌手ソフィア・ボサンが監督の反対を押し切って、映画公開前の1934年年末に劇場で初演、先に大評判をとる。そして1935年2月20日に映画が公開されさらにヒット、最初のレコードは1934年12月27日、映画で伴奏を担当したフランシスコ・ロムート楽団で、歌手は専属のフェルナンド・ディアス。ちょうど映画公開と同じぐらいのタイミングで発売されたことだろう。一方エルネスト・ファマが録音したのは映画公開後の1935年4月16日で、フランシスコ・カナロ楽団の伴奏、その少し前にカナロ楽団は専属のロベルト・マイダの歌を加えて録音している。ソフィア・ボサンのレコードはないが、1936年にはパリでディセポロ楽団=タニアの歌の録音が行われている。

1「古道具屋」楽譜表紙

「古道具屋」楽譜表紙

2「古道具屋」初演者ソフィア・ボサン

「古道具屋」初演者ソフィア・ボサン

 当時のアルゼンチンは、1929年の世界恐慌により経済が悪化、1930年9月に軍部クーデターでイリゴージェン大統領が失脚、1932年不正選挙で勝利し大統領となったフスト将軍は大地主の利益を守るため対英追従策をとり、後に「忌まわしき30年代」と呼ばれる厳しい時代となる。困窮した地方部から首都に大量の移民が出始めるのもこの頃。

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