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[2017.07]風を奏でる音楽家のダイアリー #01 コミュニケーション

文 ● ジョアナ・ケイロス

 アルバムをリリースすることは、私にとって海にメッセージボトルを放つような行為。暗号のようなメッセージが、この大海のどこかに同じような気持ちを抱いている人を見つける、というおぼろげな使命を携え、放浪する。

 作曲という行為は、表現したい! というある種の差し迫った気持ちによってされる。内にしまい込んではおけなくて、外に放出したい溢れ出る気持ちによってされる。演奏することでは、コミュニケーションマジックが引き起こされる。その前までただ感覚的だったところに、親近感が生まれて、形になる。聴く人は音を覚えて、そして口ずさむ。そして、大なり小なり心の動きを感じる。その音楽が生まれる発端となった気持ちを人と共有できる。ライヴというのは、ミュージシャンと観客とがつながる魔法が生まれて、まるで会話をしているみたい。ステージ上で交わされるミュージシャン同士の対話は、聴く人にも伝わって、それは視線や、表情、笑顔、拍手、感嘆や静寂などによってかえってくる。目を閉じて音に聴き入る人もいる。人は時に、音に触れて行動を起こす衝動にかられることもある。言葉にしたり、抱きついてきたり(これには面白いエピソードがあるのですが、また今度お話しすることにします)。コンサートが終わって、自分の中に感情をそっとしまいこんで静かに会場を後にする人もいる。他の作品のインスピレーションとなって、後になって詩が生まれたり、絵画が生まれたり、新しい曲が生まれたりすることもある。そして時に音楽は人に平静をもたらし、喜びをもたらす。音楽は、心に新しい息を吹き込んで、心地よさをもたらしてくれる。あまり心に響くことなく、すぐに忘れてしまうこともあるかもしれないけれど。

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