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[2017.03]『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』

子供たちを守るために
男は巨大グローバル企業を敵に回した

文●福田優美 texto por YUMI FUKUDA

「自分が与えたミルクが原因で我が子が瀕死の状態に陥ったら」母親あるいは父親なら耐えられないほどの悲痛と自責の念に襲われるだろう。では、もし「自分が売ったミルクが原因で多くの乳児が死亡していると知ったら……」

ミルク_メイン

©Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014

 世界に先駆けて日本公開が決定した映画『汚れたミルク』は、誰もがその名を知る実在の大企業が販売する粉ミルクが、パキスタンにおいて乳児の死亡原因になっているという事実を取りざたした作品だ。汚染された水で溶いた粉ミルクや、洗浄不足の哺乳瓶でそれを飲んだ多くの乳児が、下痢による脱水症状を起こし死亡した。貧しい家庭では、高価な粉ミルクを極度に希釈していたため、栄養失調の原因にもなった。そして粉ミルクに依存した母親たちは、本来出たはずの母乳を出せなくなった。(母乳は乳児に吸われることによって体内で作られる)

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