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[2008.09]ゼリア・ガタイ 文豪の妻として、また遅咲きの飾らない文豪として生きた91年間[連載 Relatório do Brasil ❸]

文●岸和田仁
texto por HITOSHI KISHIWADA

 5月17日、作家ゼリア・ガタイがなくなった。享年91歳。文豪ジョルジ・アマード(1912〜2001)の夫人であったが、63歳でデビューした遅咲きの作家としては回顧的エッセイや児童文学を主体に16冊の作品を残している。このブラジル文学アカデミー会員作家の遺骸は遺志に従い火葬され、その遺灰は夫と同じくサルヴァドールの自宅の庭にあるマンゴ樹の下に埋められた。

「ジョルジは天国で、文字通り諸手を挙げて彼女を待ち受けているだろう」とは、アマード夫妻の親友であったミュージシャン、ドリヴァル・カイミの言葉だ。(ドリヴァルの孫娘ステリャが聞いた表現だ)なんとも羨ましいというか、これほどまで愛し合った夫妻はないといっていいほどのおしどり夫婦であった。

 彼女について、筆者は以前(本誌2002年8月号)小文を書いたことがあるが、この機会に改めてゼリア・ガタイという女流作家の魅力についてメモを重ねてみたい。(引用文などは、この小文とだいぶダブる部分があるが、この点はご寛恕願いたい。)

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ゼリア・ガタイとジョルジ・アマード

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