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[2019.03]ミロンゲーロス 〜ブエノスアイレス 黄金のリズム 映画〜老ミロンゲーロたちの貴重な証言 監督インタビュー

文●本田 健治

text by Kenji Honda

「ミロンゲーロなんてもういないよ。いなくなりつつあるんだよ。」というビクトル・ロメロの言葉と共にこの映画は始まる。続いて「今、技術的にはよくなっているよ…それは認めないと…間違いなくね。でもテクニックばかりが先行して心が欠けているね」というルイス・ビルトゥアーニの言葉…。

 本誌先月号で天野さんが紹介した映画「ミロンゲーロス」。この映画についてはいろんな意見を聞いてきた。しかし、基本的にはあのアルゼンチンで、このテーマでよくここまで映画としてまとめたものだ、と思う。今回、大阪のフェスティバルホールで2人の制作者に会えたのでお話を聞いてみた。

 この映画は、言って見ればタンゴ版『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』だろう。しかし、プロが作った映画ではなく、タンゴを愛した日本の、関西の、一人のタンゴ・ダンスを愛した女性、福田利加女史が発案し、老ミロンゲーロたちに愛されたアルゼンチンのホセ・ルイスと仲間たちが協力して作り上げた貴重な証言集である。

 その昔、エドゥアルド・アルキンバウは、あの「タンゴ・アルヘンティーノ」をはじめ多くの世界的タンゴ・ショーの振付に関わり、自らも出演して忙しかった頃、何度も夜中にミロンガに連れて行かれ、いつもこう聞かされた。

「タンゴ・ショーを作り上げるときに忘れてはならないのが、昔からのタンゴのエッセンス。大仰な振付も必要だが、昔からあるミロンゲーロたちの誇りを忘れると、タンゴではなくなる。」

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