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[2020.05]タンゴのうた 詩から見るタンゴの世界 連載第28回 わが不在の歌(ミ・カンシオン・デ・アウセンシア)

文●西村秀人 text by HIDETO NISHIMURA

私にとってタンゴ歌手といえば、ロベルト・ゴジェネチェなのである。それは現役で見ることの出来た数少ない黄金時代を知る歌手の一人だからでもある。あまたのヒット曲をもつゴジェネチェだが、死後に出版された評伝でこの曲が、彼のヒット曲の中で特別な意味を持つ曲だということを知った。

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アルバム「オラシオン・ポルテーニャ」

アルバム『オラシオン・ポルテーニャ』

 1966年、新興レーベルだったアラニッキー Alanickyの特別企画として、ロベルト・パンセラ作曲、ロベルト・ランベルトゥッチ作詞、ホセ・ブラガート音楽監督による新作タンゴ集「オラシオン・ポルテーニャ」が制作された。その2年前、アルゼンチン・フィリップスが制作したフォルクローレをベースにしたミサ曲「ミサ・クリオージャ」の大ヒットは、すぐに「ミサ・チレーナ」「ミサ・ブラジレイラ」「ミサ・クリオージャ・ベネソラーナ」「ミサ・フォルクロリカ・パラグアジャ」「ミサ・ルバ」「ミサ・フラメンカ」などの続編を生むに至ったが、この「オラシオン・ポルテーニャ」(ブエノスアイレスの祈り)もその延長線上にある企画と思われ、実際アルバムの冒頭と最後には短いミサ曲「ミサ・ポルテーニャ」(ブエノスアイレスのミサ)という曲が収録され、「ミサ・クリオージャ」タンゴ版という意図だったのだろう。しかしいわゆるミサ曲は少年合唱団による「クレド」だけで、他の収録曲は神や信仰をテーマにした、新作タンゴをさまざまなタンゴ歌手(アルバ・ソリス、リカルド・ルイス、カルロス・ダンテ、スシィ・レイバ、ホルヘ・バルデス、エンソ・バレンティーノ他)が1曲づつ歌う、というものであった。その中で唯一後世に残った曲が、本集で最も宗教色がないように思える、この「わが不在の歌」であり、録音で歌ったのがロベルト・ゴジェネチェであった。

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