[2020.05]ジャルダンの片隅で〜五十路エイリアン在仏記〜 第8回(最終回) 「NYC テレビ番組収録とビーコンシアター公演の巻」

文●中島ノブユキ(音楽家) text by NOBUYUKI NAKAJIMA

 コロナによる世界的惨状そして人類の危機の渦中である。そして今号にてラティーナ誌が休刊になるという事がアナウンスされました。どちらも大変重要なことで、ついついそちらに筆が進みそうになってしまうのだけれども、紙面の制約もあるし、ここはグッとこらえて淡々と前号の続きを書き進めたいと思う。ジェーン・バーキンのニューヨーク公演にイギー・ポップとシャルロット・ゲンズブールがゲストで参加するという事になり、その宣伝もかねてイギーとジェーンとで小編成にてテレビ番組用の収録をすることになった。その新規編曲用の譜面の準備に追われた……と言うのが前号の話。

 さて、ニューヨークに向けた出発準備の中、番組収録のみでの演奏予定だった「エリザ」(セルジュの曲)をオーケストラとの公演でもイギーが歌いたいという話が急遽伝わってきた。もう全く時間は無いのだけれど、小編成用に既に編曲の骨組みは作ってあったし、何とかなるかと奮起し、夜を徹した作業で仕上げた。家を出る直前まで譜面作業を行い、ニューヨークに楽譜を転送したのはオルリー空港の航空会社のラウンジから。送信ボタンを押し、濃いリキュールでクイッと喉を潤したところに搭乗のアナウンス。無事に機上の人となった。

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