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[2017.01]【連載 それでもセーヌは流れる 100】不思議の国の、 成熟の新アルバム『あばら骨の星』

文●向風三郎

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クロ・ペルガグ近影 (髪はここまで伸びてきた)

 パリでクロ・ペルガグに初めて会って、その天才と狂気に完全に魅せられて、夢中で記事を書いたのが、本誌2014年5月号のことだった。あの時、クロは23歳で、外見は小柄で可憐なお嬢さんだったが、一旦ステージに立つと身体のあらゆる毛穴から音楽が噴き出るようなパフォーマーに変身し、ガイコツや果物の着ぐるみというシュールな衣装も、レトロなディズニー動画の音楽シーンを不気味なユーモアで包んだようなショー演出も、誰にも理解できないが誰もが笑い出すギャグも、すべてが前代未聞のユニークさで圧倒された。

 あの頃クロは2013年10月(ケベック発売。フランス発売は2014年3月)に発表されたファーストアルバム『怪物たちの錬金術』のツアーをカナダと欧州の両方で行っていて、2015年12月に終了するまで2年以上続いたこのツアーは、その間に生き物のように成長し、衣装もショー演出もどんどん変わっていった。私はその間に4回パリでこのショーを見ているが、毎回まるで違うのである。だから一度見た人でも次も全く違ったショーが楽しめ、病みつきになる。

 「病みつき」という言葉はクロ・ペルガグにふさわしい。アルバム『怪物たちの錬金術』には病気、病院、薬物、死といった言葉がふんだんに登場する上に美しい旋律とハーモニーにあふれたバロックな作品である。「ビョーキ」とカタカナで書きたくなるような、クレージーでブラックなユーモア感覚があふれている。だが、彼女のこの病気との立ち向かい方はいたって真剣なのである。

 2年以上続いたツアーは、2015年12月12日、カナダ、モンレアルのクラブ・ソーダで最終日を迎えたが、その最終コンサートの演奏の曲間にクロ・ペルガグはその長い頭髪を切り落とし、さらにバリカンでつるつるのスキンヘッドに剃り上げるというパフォーマンスを披露している。これはカナダのガン闘病の子供たちを支援する団体LEUCANによる頭髪ドナーを募るキャンペーンに協力する意図で行われたもので、子供用頭髪かつらを作るためにドナーにスキンヘッドになってもらう活動は2001年に始められ、今日まで7万5千人のカナダ市民ドナーが頭を丸めている。

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