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[2017.12]島々百景 #22 西表島

文と写真:宮沢和史

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 崎山ゆ新村ゆ 立てぃだす サーユイユイ ショウラヨーイーヌハリユバナヲレ
  (崎山の新村を建てたのは)
なゆぬゆん いきゃぬつぃにゃんどう立てぃだね
  (どうして、いかなる理由で建てたのか)
野浜ぶつぃ兼久地ぬゆやんどう 
  (野浜という良港と、兼久地の肥沃な土地があったからである)
『崎山ユンタ』
対訳:仲宗根幸市

 沖縄県八重山地方に浮かぶ西表島というと熱帯雨林気候の自然豊かな島で、カヤックやシュノーケリング、スキューバなどのアウトドアスポーツが盛んな地というイメージを皆さんお持ちかと思う。昨今では「エコツアー」なんて言葉が聞こえて来る島のひとつでもあるのもご存知だろう。一方で水牛車でゆったりと渡る由布島を散策する文科系なツアーもここでは人気だ。飛行場はなく、アクセスは石垣島からはフェリーで所要時間40分程度を要する航路しかなく、海が荒れる季節には欠航となる事も少なくない。それでも、沖縄の他の島々に比べ大自然が多く残るこの島には都会では味わえない、沖縄本島でも味わえない、太古から刻まれるゆったりとした時間が流れ、それを求める多くの人々の来島は絶えない。僕も沖縄に通うようになった今から20年以上前に積極的に離島を回ってみようと石垣島や竹富島を経て西表島に初上陸した。フェリーから降りると荒々しい大自然に放り出された気分になって、冒険心たっぷりだった自分は全てから解放されたような、本当の自由を手に入れたような気に浸ったものだ。信号機が一台しかないことにも驚かされた。なんでも子供達の情操教育のためにそれほど必要性のないその信号機を建てたのだと聞いた。確か二度目の来島のとき、無人の砂浜に横たわっていたら遠くからひとりの人間が近づいてきて、お互い目があってびっくり! なんと中高と一緒の学校に通い、同じバンド、同じクラブ活動をしていた同級生だったのだ。「こんなことある?」誰もいない砂浜で大いに笑った。そんな不思議な思い出もこの島にある。

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