見出し画像

[2018.04]【短期連載】 The Latin Music is a Tramp!#9(最終回) チューチョ・バルデス&ゴンサーロ・ルバルカバ

文●山本幸洋

ドナルド・トランプがUS大統領に就任し一年が経過した。移民の国を人種(混血が進んでいるので事実上は肌の色)と民族と宗教で分離し、対立と分断をあおる手法に対し多くの人々が危惧しているが、いまのところ人々の声の力と英知によって、不可逆で致命的な混乱は生じていない。

 咋2017年にキューバン〜ラテン・ジャズのミュージシャンが多数来日することを受けて、西アフリカ文化とスペイン文化が混じり発展したキューバの音楽文化が、アフリカン・アメリカンの都市音楽ジャズやアフリカの現代ポップと相互に影響したことをミュージシャンから聞き出そうと短期9回で連載させていただいた。移民たちが築き上げてきた移民文化〜音楽の力強い結びつきは解っていたつもりだが、その音楽のカッコ良さに惚れた!という根本的な動機を彼らの言葉として直接聞いて再確認することができた。肌の色と民族と宗教の違いによって対立するのではなく、異文化の良さを知り、それを理解し咀嚼して取り入れて新たな価値観を作り出す。その知恵の結晶が革新的な音楽だ。

 最終回はキューバン・ジャズのマスター・ピアニストのドゥオ、チューチョ・バルデースとゴンサーロ・ルバルカーバ。このふたりの共通点は多いはずだが、世代や活動拠点、レーベルの違いからか、コラボらしいコラボとしてはミシェル・カミーロを交えた企画盤『プレイング・レクオーナ』くらいなものではなかろうか。彼ら自身の言葉を引き出してみたい。(17年10月24日、都内にて。協力:ブルーノート東京、通訳:神愛美)

画像1

チューチョ スペインに住んでたときにフロリダに行く機会があってゴンサーロのウチに行ったことがあったんだ。で、父(ベボ・バルデース)を看取ってからフロリダに行き、ゴンサーロの奥さんの口利きで家を見つけてご近所さんになったんだ。で、せっかくだから一緒に演らないか?ってことになった。(ゴンサーロ、頷く)

画像2

—— (『プレイング・レクオーナ』を見せて)どっちが先ですか?

チューチョ (CDを指差して)こっち。

ゴンサーロ レクオーナへのオマージュでプロデューサーはスペイン人。いままで多くのクラシカルのピアニストがレクオーナを演奏しているけど、レクオーナの音楽にはいろんな要素が含まれているから、クラシカル専門ではないピアニストが弾くことに意味があるとボクも思うんだ。で、そのプロデューサーが選んだのがこの三人だ。ドキュメンタリは観たの?

—— まだ観てません。(『プレイング〜』はドキュメンタリ映画のサントラ)

ゴンサーロ レクオーナの父はキューバに生まれ、スペインに行き、ニューヨークで亡くなった。世界の大都市で活動したことが重要なんだ。


続きをみるには

残り 3,704字 / 9画像
このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…