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[2017.10]【短期連載】 The Latin Music is a Tramp! #3 エディ・パルミエリ

文●山本幸洋

 2016年11月9日、胸騒ぎで仕事が手につかなかった午後を今もときどき思い出す。移民が建国したUSAが、移民に対し不寛容になりつつあるという現実! キューバの音楽やダンス文化がニューヨークで独自に進化してサルサと呼ばれるようになり、アメリカ大陸およびカリブ海諸国、特にスペイン語圏の国々で人気のある音楽となった背景には、キューバやプエルト・リコからニューヨーク〜USAへやってきたミュージシャンを含む移民の暮らしがある。そして、彼らの音楽に夢中になりプロのミュージシャンとなったアフリカン・アメリカンやWASP、ジューイッシュ、アジア系も少なくない。取材を通じて近視眼的な政策がどうであろうとサルサ〜ラテン・ミュージックがUSAから消えてなくなることはないと確信するが、当事者でないにもかかわらず、私も反骨心がメラメラと湧き上がってくる。

 そんな2017年の夏、エディ・パルミエリが3年ぶりに日本にやって来た。彼もまた、キューバの音楽に魅せられた一人である。本誌7月号の、エディの歴史をコンパクトにまとめた岡本郁生さんの記事も参照されたい。(2017年7月11日、都内にて。協力:ブルーノート東京)

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写真提供/BLUE NOTE TOKYO 撮影/ グレート・ザ・歌舞伎町

 いままで何度かエディに取材してきたが、個人的に!と感じたのは2005年(本誌同年9月号)である。オーケストラがあって、歌手がいて、ダンスがある文化はキューバから持ち込まれたもの……エディはそう教えてくれた。NYラテンのファンとしては常識だけど、見てきた者、実践してきた者である36年生まれのエディの言葉としてずっしりと受け止めた。

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—— 30年代、40年代のニューヨーク、エディさん周辺の音楽はどんなでしたか?

エディ・パルミエリ 30年代は判らないけど、40年代は全てが(エディの発音で)クーバ(キューバのこと)だった。ワシも利用している、ダンスのための音楽として世界最高の構造をもつ音楽だ。50年代にはマンボやチャチャチャが流行ったけど、60年代になるとフィデル・カストロがやって来て、その流れを止めてしまったものだからキューバの動向が解りにくくなってしまったんだ。そのあとブーガルーがやってきた。あれはひどい(笑)

—— でも、あなたもブーガルー・アルバム(『シャンペイン』)を作ってますよね?

エディ・パルミエリ ワシの「アイ・ケ・リコ」がベストだろう。チェオ・フェリシアーノが歌で、カチャーオがベースだ。とにかくブーガルーはひどい。(キューバ)音楽がどっか行ってしまった。

—— そうですが、メロディやコード進行はワヒーラに近いという見方もあります。

エディ・パルミエリ (困った表情で)ナッシング。メロディもリズムも単純すぎる。(ジョー・クーバの)「バン・バン」は、ビビッ! ア〜〜〜って言ってるだけだろ?

—— ダンス文化がハバナからニューヨークにもたらされたのは40年代末ですか?

エディ・パルミエリ いや、第二次世界大戦後だ。アルセニオ・ロドリーゲスやベニ・モレー、セリア・クルースとラ・ソノーラ・マタンセーラらの音楽が届いたんだ。ニューヨークにはマチートとティト・プエンテ、ティト・ロドリーゲスのオーケストラがあった。

—— (LPを見せながら)1941年のマチート楽団はルンバを演奏していました。

エディ・パルミエリ うん、マンボを持ち込んだのはレネ・エルナンデスだからね。ルンバはストリートの音楽でワワンコー、ヤンブー、コルンビアに分けられるんだ。マチート楽団は39年にスタートしたけど、やがてマチートは陸軍に入隊し戦後になって復帰したんだ。レネ・エルナンデス(45年12月にキューバからUSに移住しマチート楽団に参加)はマチート楽団を一段上のレベルに引き上げたね。

—— マンボが流行ったの は?

エディ・パルミエリ 50年代だね。ワシは若かったから、マチートやティト・プエンテ、ティト・ロドリーゲスらをラジオで聴いていた。


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