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[2019.04]映画『バイス』

文●圷 滋夫 Shigeo Akutsu

 “アメリカ”と聞いて思い浮かべるイメージは、人によって千差万別だろう。中でも“自由の国”が最も一般的だが、そこに差別や格差に対する悲痛な叫びを聞いてしまうのも確かだ。それでも映画に反権力の意思を示す自由がある事は、ハリウッドに数々の政治的な名作が存在するのを見れば明らかだ。そして大手メディアが反権力の立場からそれを後押しする状況は、どこぞの国の政府に飼い馴らされた主要メディアの体たらくを思えば羨ましい限りだ。

 本作はジョージ・W・ブッシュ大統領を陰で操っていたと言われる、副大統領ディック・チェイニーにスポットを当てた、強烈なブラック・ジョーク満載の社会派エンタテインメントだ。イェール大学を退学になったアホ学生が、田舎の電気工からいかにしてその地位に登りつめたかを、1963年から出来る限り真実に基づいて描いている。

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