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[2019.08]MARISA MONTE〜日本のファンに向けたスペシャルなプロジェクトで マリーザ・モンチが12年ぶりに来日

文●中原 仁 text by JIN NAKAHARA

 89年にライヴ・アルバムでデビューし、今年で30周年を迎えたマリーザ・モンチ。本誌が96年から開催している「ブラジル・ディスク大賞」では、最多となる5回の1位を獲得 (うち2回はトリバリスタス名義)、日本でも長年にわたって不動の人気を維持している。

 10月には、2007年以来12年ぶり通算3度目の来日。「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2019 」の最終日に出演する。今回はいろんな意味で特別な来日となるが、それは後ほどとして、まずは近年のマリーザの活動を簡単に振り返っていこう。

 スタジオ録音のリーダー作は『あなたが本当に知りたいこと (O Que Você Quer Saber de Verdade)』(2011年) 以降、出ていないが、同作のツアーのライヴ盤『ヴェルダーヂ、ウマ・イルザォン (Verdade,Uma Ilusão Tour 2012 / 2013)』は2014年のラテン・グラミーでベストMPBアルバムを受賞した。2016年には国内外の多彩な歌手との共演曲を中心とする編集盤『コレサォン (Coleção)』を発表した。

 2017年、パウリーニョ・ダ・ヴィオラとの共演でコンサートツアーを行なった後、アルナルド・アントゥニス、カルリーニョス・ブラウンとのユニット、トリバリスタスの15年ぶりのセカンド・アルバムを発表。昨年から今年にかけて、トリバリスタスの初のコンサート・ツアーを国内外で行なった。国内の会場のほとんどが、数万人を収容するサッカー・スタジアム。今年3月にはライヴ・アルバムを配信限定でリリースした。

 他に近年では、トリバリスタスの2枚のスタジオ盤に参加したバイーアのギタリスト、セーザル・メンデスの初リーダー作『デポイス・エンフィン (Depois Enfim)』、シルヴァがマリーザのオリジナル曲をカバーした『シルヴァ・カンタ・マリーザ』にゲスト参加。共に主役と共作した書き下ろしの新曲を歌った。また、ポルトガルの新世代ファド・シンガー、カルミーニョのアントニオ・カルロス・ジョビン集にゲスト参加した。

 それでは、メールで行なった最新のインタビューから、今月号の特集「歌の国ブラジル」にちなんだ質問で始めよう。

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©Marco Froner

── 子供の頃、最初に歌詞を覚えて歌うようになった曲を、思い出も含めて3曲ぐらい、あげてください。

マリーザ・モンチ 「プレタ・プレチーニャ (Preta Pretinha)」(モライス・モレイラ&ガルヴァォン作)。この曲は、私がまだ幼かった73年の夏、両親がノンストップで聴いていたノヴォス・バイアーノスの代表作『アカボウ・ショラーレ』に入っています。家族が過ごしたリオ郊外の海沿いの家で、楽しそうに軽快に歌い踊る大人たちの喜びと興奮に満ちた姿は忘れられません。

 次にチン・マイアの歌で「プリマヴェーラ (Primavera)」(カシアーノ作)。ブラジリアン・ソウルの匠、チン・マイアのシングル盤が、子供部屋の子供向けのLPコレクションになぜだか紛れ込み、二度とそこから出ることがありませんでした。無条件にチンのファンとなり、そのずっと後に彼の友人となりました。アレンジがとても美しくて、曲が素晴らしいのです。オス・ヂアゴナイスのブラジリアン・ソウルのバッキング・ヴォーカルに合わせて一緒に歌うのが大好きでした。

 3曲目は「オ・ポルタォン (O Portão)」(ホベルト・カルロス&エラズモ・カルロス作)。70年代、ホベルト・カルロスはブラジルでフィーヴァーと化していました。当時、家で私たち姉妹の面倒を見てくれていたネイアという人が、〝O Rei (帝王)〟の愛称で親しまれていた彼の大ファンで、私たちもその影響で大好きになりました。ネイアが洋服にアイロンをかけながら聴いていたその音楽を、私たちもそばで毎日聴いていました。わんちゃんが笑顔で吠えると歌うその内容は、子供の私の関心をひきました。ずっと後になって、長旅から我が家に戻ってきたセンチメンタルな気持ちを歌う、この曲の美しさを知りました。本当に美しいです。

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