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[2018.03]特集:アフリカ音楽の新しい地図 現在の南アフリカ音楽を知るための30枚

文●板谷曜子 text by YOKO ITAYA

 南アフリカでは今、ハウス、ヒップホップ、ポップ、R&B、ジャズ、フォーク・ソング……主にこんなジャンルの音楽がミュージック・チャートに踊る。

 これらの音楽は、他のアフリカ各国の音楽と比べると、洗練度と先鋭性では一歩抜きん出ているように感じる。

 これは音楽に限らず、アートやファッション、食など、様々な分野にも共通しているのだが、南アの人々は昔から、自分たちが元々持っていた音やリズム、メロディに、欧米で流行っている様々な音楽を取り入れ、それらを組み合わせて新たな音楽を作るのが得意であるように思う。

 遡ればゴスペルやジャズ。また、90年代に欧米から輸入されたハウス・ミュージックはよっぽど南アの人々の身体と心にフィットしたのだろう。南アのハウスは、アフリカらしいパーカッションやメロディを取り入れながら独特に進化していき、今もメインのポップ・ミュージックとして聴かれている。また同じ90年代、ハウスのBPMをぐっと落としてベースを強調したミドルテンポの楽曲に、チャントやラップを乗せたクワイトという南ア版ヒップホップのようなジャンルも生まれ、相当に盛り上がった。一時は下火になったものの、最近改めて注目され始め、若手ヒップホップアーティストたちがトラップなどをやりつつ、クワイトも取り入れている。

 現在活躍している南アの様々なジャンルのアーティストたちの根底には、彼らが幼少の頃からずっとすぐ傍にあったマスカンディなどのフォーク・ソングや、ジャズ、ハウス、クワイトがあるように思う。その上で、先人たちがそうしてきたように、更に世界中の音楽を取り入れ、オリジナリティがあり、かつ洗練された新しい音楽を作ることに取り組み続けている。

 他のアフリカ各国では南アで流行っている音楽がよく聴かれるのに、南アでは他のアフリカの国のポップ・ミュージックが浸透しにくいという現象があるそうだ。各国のアーティスト同士のコラボレーションは多々あるものの、どちらかと言うと、一般には国内の音楽と欧米圏の音楽を好んで聴いているのだろう。良い悪いの話ではなく、南アの音楽が他のアフリカ各国の音楽とちょっと違う、と感じるのは、そのあたりも関係があるのではないかと思う。南アはアフリカ大陸の中でも欧米の文化が良いと思う価値観が強いのかもしれない。様々な歴史を経てそのようになったのだろうが……。

 ポジティヴに見れば、南アの音楽はある意味、今流行っている欧米の音楽と同じような線上で聴くことができるのがとても面白い。

 ここ数年で一番盛り上がっているのは、やはりダーバンのアンダーグラウンドで生まれた新しいハウスのジャンル、Gqom(ゴム)だろう。ダークで、やや変わったドラムのリズムが特徴的なGqomは、ダーバンを除いて国内にはあまり広がらず、まず欧州でピックアップされ、そこから世界に注目された。Gqomは今、南アやナイジェリアなどのオーバーグラウンドで活躍するアーティストたちが取り入れるようになり、ラップを乗せたり美しいメロディの歌を乗せたり、自分たちのスタイルと融合させながら、ポップなダンスミュージックとして広がり始めている。これがとても面白い! このポップなGqomはとにかく多くの人を躍らせる。曲に合わせてダンスをする動画をSNSに投稿するのも流行っており、またこれもみんな、どんどん新しいダンスを開発していく。オリジナルのGqomとは離れ始めている面もあるが、こうやって南アの人々は次々と新しいものを生み出していくのか! と感動してしまう。

 また、2018年に入ってからは、ケンドリック・ラマーがプロデュースしたことで話題になっているマーベル製作の映画『ブラックパンサー』のサントラに南アの人気アーティストが数名参加しており、大いに盛り上がっている。楽曲には南アの今の音楽の雰囲気が取り入れられており、世界の人々が、思った以上に洗練されている今のアフリカ音楽の面白さを知るきっかけになるのではないかと思う。まさにアフリカのヒーローのよう!

 〝Africa is the future!〟と彼らはよく言うが、本当にその通りだと思う。これからも彼らは新しいものを作る情熱を持ち続けるのだろう。未来はまだまだ楽しそう! しばらくは南アから離れられそうにない!

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