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【連載 それでもセーヌは流れる 129】残された世界を救いたいと願う アブダル・マリックの新小説

文●向風三郎 

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アブダル・マリック 小説『やっかいな傷』(2019年)

「世界を変えようとしていた作家たちの世代に私は属さない。この残された世界を救おうという作家たちのひとりだ」(8月31日国営テレビFrance Infoのインタヴュー)

 音楽アーチスト(ラップ、スラム)、詩人、作家、映画作家とマルチな才人アブダル・マリック(当年44歳)の8冊めの著作である小説『やっかいな傷(Méchantes Blessures)』が8月に刊行された。アブダル・マリックがそのセカンドアルバム『ジブラルタル』(コンスタンタン賞、シャルル・クロ賞、ヴィクトワール賞)で大きく注目されたの2006年のこと。ラップ、スラム、ジャズ、エレクトロ、シャンソン(ジュリエット・グレコとジャック・ブレルのピアニスト作曲家であるジェラール・ジュアネストと共作)のクロスオーヴァーという音楽スタイルと繊細なポエジー、そして言葉を深く響かせる声質の表現力で、郊外派フレンチラップとは一線を画す独自の道を歩む。またコンゴの上級公務員だった父に見捨てられ、ストラズブール郊外で母の手ひとつで育てられた6人兄弟のひとりという生い立ち、貧困と差別と非行(魔術師的な窃盗の名手)の少年時代、イスラム(スーフィズム)との出会いによる求道体験など、特異な個人史に根ざした小説も高い評価(エドガー・フォール賞)を受けた。2014年には映画監督として初の長編映画『フランスにアッラーの祝福あれ』(同名の自伝小説の劇映画化)もセザール賞にノミネートされている。

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