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[2019.02]【連載 それでもセーヌは流れる 121】BDで見るフレンチ・ポップの光と影

文●向風三郎

 ジョニー・アリデイ(1943-2017)が亡くなって1年経った頃、サー・ポール・マッカートニーもボノ(U2)もサン・バルテルミー島にあるジョニーの墓にお参りに行ったと報道された。世界的な評価とはズレがあるとは言え、偉大なアーティストたちからはリスペクトされていたのだ。私とて全くファンではなかったが、聞き入ってすごいと頷くジョニーの歌は少なくない。それはフランスの大衆音楽にも総体的に言えることであり、私は50年に渡ってこの音楽とつきあっているが、耳にも心にも響かない多くの楽曲に紛れて、これは日本(および世界)の友人たちにも絶対いけるはずという歌がある。

 フランスのロックを語る際に必ず引き合いに出されるのが、ジョン・レノンが言ったとされる「フランス産のロックは英国産のワインのようなもの」という手厳しい評価である。半世紀以上もの間世界で最も洗練された大衆音楽を世に送っている英国の水準からすれば、海峡のこちら側の音楽はなんとも擁護しかねるものがある。このコンプレックスに60年代からこちら側の音楽人たちも認識的であり、ゲンズブール、ポルナレフ、ジョニー、フランソワーズ・アルディなどはロンドンで録音するということでその水準差を埋めようとした。このコンプレックスは時代を超えて今日まで続くものであるが、昨今クリスティーヌ&ザ・クイーンズが英国で驚異的に高い評価を受けたりすると、ジョン・レノンの時代からは少しは変わったのだと思っていいのではないか。

1) エルヴェ・ブーリ&エルヴェ・タンクレル著『フレンチ・ポップ小事典』表紙2

エルヴェ・ブーリ&エルヴェ・タンクレル著
『フレンチ・ポップ小事典』表紙

「フレンチ・ポップ」― 定義の難しい音楽ジャンルである。これはフランスの大衆音楽全般のことではない。2018年11月に刊行されたハードカバー240頁の図鑑本『フレンチ・ポップ小事典』(文エルヴェ・ブーリ/画エルヴェ・タンクレル。ダルゴー社刊)ではこう紹介されている:

フレンチ・ポップとは(…)国際舞台で(つまり東京やロンドンで)のわが国の音楽の呼称であり、レコード店やストリーミングサイトにおいてワールド・ミュージックのひとつのサブジャンルである。シャンソンでもフレンチ・ロックでもフレンチ・ラップでもエレクトロでもないが、それらすべてをちょっと集めたものである。

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