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[2017.11]連載 太平洋の向こう岸からの手紙 #6 『マエストロたち』

文●フアン・フェルミン・フェラリス

 なぜ自分がピアノを弾きたかったのか覚えていません。覚えているのは両親に最初にキーボードを与えられた日のこと。それ以来、多くの出来事が音楽を通して起こりましたが、決して演奏をやめることはありませんでした。その中で最も重要なことは演奏し学び続けたいと考えている自分に気づいたこと。それまで家では自分の好きな音楽を弾いていましたが、先生に習っている時はクラシックの作品ばかり弾いていました。その日私はクラシックのクラスをやめたのです。もうその年は学校で学んでいた最後の数年だったのですが、友人に尋ねたり、インターネットで探したりして知った好きな曲を演奏して過ごすようになりました。自分の弾きたいパッセージをずっと聴いていたりもしましたね。


 ある日、自分が学びたかったポピュラー音楽の分野の先生の存在を知りました。幾人かの先生に相談すると、特に2人の名が挙がりました。そのうち1人がアレハンドロ・ロドリゲスというピアニストで、彼はラ・ソノーラというグループで演奏していました。彼は私が学んだ最初のプロの音楽家で、彼の話し方や生き方をよく観察していました。私の家系には音楽家はいなかったので、自分にとって特別な出会いだったのです。


 ところで、私がアレハンドロのクラスでもっとも熱中したのは、彼の教えよりも彼の作曲そのものでした。どうやってそこへたどり着いたか理解できなかった、だから彼の下で学ぶことを選んだのです。

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