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[2021.01]【TOKIKOの 地球曼荼羅⑥】100年前の日本〜Peopleの時代の始まり!

文●加藤登紀子 

 新型コロナに揺さぶられた2020年が終わり、新しい年の始まり!
「悪いことは、いいことのために起こる」と言う言葉もあるそうなので、何とか去年の経験を明るい物語に変えるような年にしたいと願って、今回のテーマを「100年前の日本〜Peopleの時代の始まり」とした。

 去年、コロナ禍で時ならず100年前のスペイン風邪のことが話題になり、劇作家の島村抱月が1918年(大正7年)11月5日スペイン風邪で亡くなり、その翌年、恋人だった女優の松井須磨子が1月5日の月命日に後を追って自死という、あまりに劇的なエピソードも浮上した。

 その松井須磨子が1914年(大正3年)に歌った「カチューシャの唄」こそ、日本の大衆歌第一号、大正4年の「ゴンドラの唄」もそれに続く大ヒット曲に!そのビッグニュースからこのテーマに迫ろう。

 ラジオ放送だって1925年まで始まっていない。レコード盤にはなったらしいが、ほとんどの人は聞くことはできなかったはず。なのに、どうしてこのような大ヒット曲になったのだろうか?

 島村抱月がトルストイの「復活」を脚色した芝居の劇中歌として松井須磨子が歌った「カチューシャの唄」は、公演初日に、もう人々は街の中で歌っていたそうだ。
 初演の前日の新聞に歌詞を載せ、劇場の壁に歌詞を張り出しただけで…。
その頃の人々がどれほど歌を待っていたか、が伝わってくる。

 そしてこのふたつの歌が日本の歌に私を目覚めさせた重要なうたでもある。
 まずは、私と「カチューシャの唄」を結んで行きたい。

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