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[2021.12] 『夜空に星のあるように』 『ラストナイト・イン・ソーホー』 『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』 ─ 名匠ケン・ローチが繋ぐエドガー・ライトとザ・スミスの世界

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文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)

 ケン・ローチ監督の劇場長編映画デビュー作『夜空に星のあるように』(1967)が、半世紀以上の時を経てスクリーンに戻って来る。ローチは世界三大映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを二度受賞し、今や名実ともに世界的な巨匠となったが、本作を観れば社会に向き合う真摯な姿勢や独特な映画スタイルが、最初から一貫して変わっていないことが分かるだろう。

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©1967 STUDIOCANAL FILMS LTD.
『夜空に星のあるように』
2021年12月17日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

 格差社会と失業/貧困、移民と人種差別など、社会が抱える様々な問題を背景に人間ドラマを描き、困惑しながらもユーモアを持って生き生きと日常を送る市井の人々に、厳しくも温かな眼差しを向ける。そして立場の弱い人々を置き去りにする社会への激しい怒りとやるせなさを忍ばせながら、その眼差しを見事に映画作品として昇華するのだ。ロケを多用する撮影や、社会状況をリアルに取り込みながら職業俳優ではない素人(子供の自然な表情や動き!)を多く登場させるドキュメンタリー・タッチの大胆な演出方法も大きな特徴だ。それは当時ローチが影響を受けた“怒れる若者たち”や“ネオレアリズモ”、そして“ヌーヴェルヴァーグ”の要素が混在していると言ってもいいだろう。

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