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[2019.05]音楽を解き放つチェリスト、 ジョヴァンニ・ソッリマ 今夏「100チェロ」を率いて東京へ

文●安田真子

text by MAKO YASUDA

 世界各地の有名ホールや音楽祭への出演依頼が引きも切らないソリストであり、ローマの国立音楽院で教鞭をとる指導者で、毎年新作を多数手がける人気作曲家。ジョヴァンニ・ソッリマは、その全ての側面で唯一無二の魅力を放つアーティストだ。

 チェロという楽器ひとつでバロックから現代音楽、ロックまで、あらゆる音楽を自在に行き来する。その演奏はしばしば即興的であり、作品への深い理解に裏打ちされている。情感豊かで自然な勢いがあり、音の肌理が細かい。演奏技術の高さはもちろんだが、チェロでここまで雄弁に聴衆へ語りかけることができる音楽家は世界でも片手で数えるほどだろう。

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 ソッリマはチェロという小さな船に聴く人を招き入れ、音楽の旅にいざなう。そこには音楽が生まれる瞬間に立ち会う興奮があり、発見がある。活動のごく一部を紹介すると、18世紀の作曲家でチェリストのジョヴァンニ・バッティスタ・コスタンツィやルイージ・ボッケリーニなどの作品を発掘、録音して高く評価されている一方で、バロックからロックまで時代やジャンルを越えた音楽をつなぐ「BaRock Cello」という独奏のプロジェクトを過去10年以上にわたって続けており、幅広い世代の聴衆や音楽家に影響を与えている。

 シチリア島パレルモの有名な音楽一家に生まれ、ソッリマはごく自然に作曲を始めた。クラシック音楽の基礎を古典的な手法で習得し、その上でバロック、ジャズ、舞踏、演劇などを現代的なアプローチで学んだ。

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