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[2017.04]旅する楽団の音楽大冒険〜映画「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」が示す理想の世界

文●圷 滋夫

 アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞、グラミー賞最優秀音楽映画賞他、数多くの映画賞に輝いた傑作「バックコーラスの歌姫たち」をはじめ、常に優れた音楽ドキュメンタリー作品を送り出してきた監督モーガン・ネヴィルの新作は、2000年にヨーヨー・マによって結成された異色の音楽集団シルクロード・アンサンブル(NHKのドキュメンタリー「新シルクロード」の音楽として知っている方も多いだろう)に迫った作品だ。もちろんヨーヨーの生い立ちや天才ゆえの苦悩も描かれ、まだ7歳のチェロの神童をあのレナード・バーンスタインが紹介しケネディー大統領夫妻の前で演奏するテレビ映像や映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズ、グラミー賞を受賞した「ハッシュ」で共演した革新的な歌手ボビー・マクファーリンのインタビューも登場する。しかしあくまでもメインは世界中から集められた才能豊かな60名以上の音楽家によって始まった楽団の存在そのものであり、特にその中の4人のメンバーが直面する人生の困難を通して、伝統を守る事の意味やアイデンティティーの必要性、故郷の存在、そして芸術の持つ可能性を浮き彫りにする。

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