[2018.08]ブラジルフィールドワーク #03 ファヴェーラ ボランティア時代の思い出
文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO
私のブラジルとの付き合いは1992年から2年ちょっとの間、サンパウロ市郊外のファヴェーラに住み込んで働いた時から始まる。ボランティア時代は、しばしば日本からの見学者を案内した。そうこうするうちに、だんだんうんざり思えてきたのが、こんな言葉だった。
「なぜファヴェーラの子どもたちの瞳はこんなに輝いているの?」「それに引きかえ日本の子どもたちは」「日本は豊かになって心の豊かさを失ってしまった。ここには真の豊かさがある」
いただいた素直な感想を揶揄するつもりはもちろん全然ないけれど、ひねくれ者としては「ん、ん?」と引っかかってならなかった。
「遠くから珍しいお客さんが来たら誰だって瞳が輝きますよー。それに東洋人と違って目が大きいですから!」というのは半分冗談だったにしても、なんだかムキになってこう返事をしたものだ。
「子どもは本来、瞳が輝いていてあたりまえなはずなのでは?」「もし日本の子どもの瞳が輝いていないのなら、輝きを失わせている理由こそを私たち日本のおとなは考えなくてはいけないのでは?」「豊かになれば必ず心が貧しくなるのだったら、支援はしない方がいいということになりませんか?」
そんな疑問の投げかけをきっかけに議論が深まった時は、とてもうれしかったのを憶えている。
岩山の上昇気流に乗せて手作りの自慢の凧を揚げる (ファヴェーラ「サンタマルタ」- リオデジャネイロ)
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